<東海第二原発 再考再稼働>(41)住民の声 指針に反映を OurPlanet−TV代表理事・白石草さん(52)

2022年5月5日 07時21分
 東京電力福島第一原発事故の直後から、被ばくの健康被害を取材してきた。二〇一三年にウクライナで、チェルノブイリ原発事故の影響による甲状腺がんの問題について現地の研究者から話を聞いてからは、甲状腺がんに焦点を当てている。ここ数年は、甲状腺がんになった福島の若い世代に取材を重ねている。
 甲状腺がんはもともと希少な病気だから、ほかの病気と違って国際機関は原発事故との因果関係を認めている。一方、日本政府は甲状腺がん患者の増加と福島事故による被ばくの因果関係を認めていない。まずはこの問題をしっかり見ないと、原発事故の健康影響は理解できない。
 こうした問題意識と関連する課題に、甲状腺被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤の配布がある。一定年齢以下の人は、放射性物質が出ると分かった段階で、それに先だって服用していないといけないが、全国的に配布する体制は不十分だ。とりわけ日本原子力発電東海第二原発(東海村)では進んでいないようだ。
 事前配布の対象は原発から五キロ圏内だが、東海第二ではその範囲ですら配布はあまり進んでいないと聞く。三十キロ圏内の住民は配布ではなく、保健所などに取りに行くことになっている。早めに飲まないといけないものを、いざ事故が起きた時に何万人もの人が取りに行くというのが、現実的とは思えない。
 そもそも国際基準からみると、ヨウ素剤はもっと広範囲に配布するべきだ。東海第二の事故を想定するなら、東京都民も全員が服用した方がいい。そういう意味では、配る範囲を決めている国の原子力防災指針自体がまずおかしいし、指針に基づいて定める広域避難計画で決められたことを徹底できていない自治体もおかしい。二重の意味で問題を抱えている。
 国の指針も自治体の避難計画も、一番の問題は住民の意見がほとんど反映されていないことだ。一度大きな事故が起きているので、住民の声を反映させる仕組みをつくるべきだが、いまだに専門家だけで議論をしている。
 指針の見直しや計画策定の際のパブリックコメント(意見公募)も形だけで終わっている。ちゃんと事前に配布しろとか、配る範囲をもっと広げろとか、ほとんどの人は同じことしか言っていないのに、全部無視されている。全く民主的な手続きではない。
 こうした状況に関わりなく、そもそも東海第二の再稼働はリスクが大きい。これだけの人口密集地にあり、老朽化している。十年もブランクがあるし、仮に稼働したとしてもその直後からトラブルは続くだろう。
 もし首都圏全体に及ぶような大きな事故が起きた時に、手順良く計画通りに対応できるとは誰も思っていない。運転差し止めを求める裁判も、避難計画の議論も、机上の空論のためにみんなが争っているように見える。(聞き手・長崎高大)
<しらいし・はじめ> 1969年、東京都生まれ。早稲田大教育学部卒業後、テレビ業界を経て2001年に非営利のインターネットメディア「OurPlanet−TV」を設立。代表理事を務める。著書に「メディアをつくる」「ルポ チェルノブイリ28年目の子どもたち」など。

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