偽りのない世界 演じきる 映画「流浪の月」で難役に挑む 広瀬すず

2022年5月5日 07時25分
 広瀬すず(23)と松坂桃李(33)のダブル主演で、女児誘拐事件の加害者と被害者の許されざる関係を描いた映画「流浪の月」(李相日(リサンイル)監督、十三日公開)。成長した被害女児を演じた広瀬は「彼女が守ってきた思いに共感できるかどうかは分からないが、目撃者になってほしい」と呼び掛ける。自身にとっては忘れかけていたものを取り戻す作品になった。 (藤原哲也)
 更紗(さらさ)(広瀬)は恋人の亮(横浜流星)と幸せに暮らしていたが、十五年前の誘拐事件の被害者として地元では知られていた。ある日、偶然入ったカフェで文(ふみ)(松坂)と事件以来の再会を果たす。文のそばには恋人らしい女性のあゆみ(多部未華子)が寄り添うが…。李監督が本屋大賞を受賞した凪良(なぎら)ゆうの原作にほれ込み、脚本も手掛けた。
 広瀬には苦い記憶がある。映画「怒り」(二〇一六年)の撮影中、「この映画壊す気?」と李監督の厳しい言葉を浴びた。それ以来の李作品。しかも、出演依頼が来たのは「芝居がふわふわしていた時期で不安しかなかった」時だった。
 「だから、李組でそこから抜け出せるなら逆にラッキーかな、と。考えるよりも現場で感じた方が早いなと思った」
 不安と向き合い、撮影前には入念に役作りをした。はかなさを出すために食事を調整し、更紗が育った環境を感じようと自分が登場しないロケ地にも足を運んだ。「提案されたものは全部試した」。映画、ドラマへの出演で多忙を極めたこの数年間はできなかったことだが、それでも撮影序盤は心情表現で監督のOKが出ないことが続いた。
 「感情が生まれなくて、ずっと苦しかった。自分の経験から知っている感情にどうつなげていいか分からなくて…」。十代から仕事優先で、それ以外の経験が少なかったことに気づき、「経験って本当に大事だと思った」と振り返る。
 松坂とは映画「いのちの停車場」(二一年)で共演している。気心は知れているつもりだが、はかなさを通り越えて激やせした姿には「もはやすごすぎて器用とも思わない。それでも桃李さんの人柄は変わらなくて逆に怖かった」と、プロ意識に驚嘆したという。
 若手俳優のトップを走り続け、今年、デビュー十周年になった。
 映画出演は二十作を超え「すごく自分が満たされるのが映画」と思い入れは強い。苦しみながら完走した本作。「(更紗と文の)二人には全くうそがない。そこが少しでも伝わればいいなと更紗として思う」。何かを取り戻した充実感が言葉ににじんだ。
 東京・TOHOシネマズ日比谷などで公開予定。

映画「流浪の月」から、松坂桃李と広瀬すず(右)


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