匿名読者から届いた18冊の「旧日本軍マニュアル」 ポケットサイズで常時携帯か 玉砕や集団自決につながった一文も…

2022年5月6日 06時00分

匿名の読者から届いた「国体の本義」や「戦陣訓」などの教範

 旧日本陸軍で使われた戦闘時の要領や作戦遂行の心構え、軍隊生活の必要事項といった基本的な内容を記した軍人向けの「教範」などが3月下旬、東京新聞読者部あてに匿名の宅配便で届いた。専門家は「当時の軍隊でどのような教育が行われていたのかを知ることができる」としている。(小松田健一)

◆敵機の見分け方や戦闘手順なども

 本紙に届いたのは3月28日。小型段ボールに計18冊が入れられ、伝票の差出人欄には手書きで「読者」とだけ記されていた。一部に元の持ち主とみられる男性の名前や、下宿先と思われる京都市内の住所も記されていたが、送り主がその人物かは分からない。
 教範とは、軍隊での日常生活や戦闘などに必要な手順を記したマニュアル。いずれも常時携帯できるよう、ポケットサイズになっている。

匿名の読者から届いた教範。英国、米国、ソ連軍の飛行機識別の本もあった

 本紙に送られてきた教範の発行時期は1934〜43年とばらつきがあり、大砲を扱うための「砲兵操典」や、軍隊生活の基本を記した「軍隊内務令」、兵士が米・英・ソ連軍の航空機を識別するためのイラスト集など多岐にわたる。
 41年に東条英機陸軍相(後に首相)が編さんした「戦陣訓」もあり、降伏して捕虜になることを禁じた「生きて虜囚りょしゅうはずかしめを受けず」との一文もあった。この文言は、全滅するまで戦う「玉砕」や民間人の集団自決につながったとされる。

匿名の読者から届いた教範。戦陣訓には「生きて虜囚の辱めを受けず」の文面

 旧日本軍の教範に詳しい元防衛大准教授で軍事研究家の関口高史さんは、元の持ち主を「教範や書籍が体系的になっており、部隊で軍人を束ねる立場だった軍曹以上の下士官か、尉官級の将校だった可能性がある」とみる。電機や機械関係の教科書もあったため「砲兵部隊で通信に携わっていたのではないか」とみる。

匿名の読者から届いた教範に目を通しながら話す軍事研究家の関口高史さん=東京都千代田区で

 37年に文部省(当時)が発行した「国体の本義」も同封されていた。「天皇は国の最高機関として統治権を行使する」とした憲法学説「天皇機関説」が不敬として、提唱者の美濃部達吉・東京帝大教授を攻撃した天皇機関説事件(1935年)を契機に、西洋近代思想を否定し、神話や古典を典拠に万世一系の天皇による統治の正統性を強調した書籍だ。

◆軍隊式教育の一端垣間見え

 これらの教範や書籍の発行時期を考慮すると、存命ならば100歳を超えているとみられる。要点にかぎかっこを加えたり、難解な漢字にはルビを振ったりするなど、きちょうめんな性格がうかがえた。
 関口さんは「秘匿性が高い教範は含まれておらず、希少性はあまりない。しかし、総力戦であらゆる分野から人を集めて将兵とするに当たって、効率的に教育する手段がどのようなものだったかを知ることができる」と話した。
   ◇   ◇
 「ニュースあなた発」への調査依頼や情報は、東京新聞ホームページの専用フォームや無料通信アプリ「LINE(ライン)」からお寄せいただけます。

おすすめ情報

ニュースあなた発の新着

記事一覧