「鬼滅の刃」能狂言に 大槻文蔵、野村萬斎ら 7月に東京公演

2022年5月6日 06時57分

能狂言「鬼滅の刃」の発表会見に臨んだ(左から)木ノ下裕一、野村萬斎、大槻文蔵、大槻裕一=東京・観世能楽堂で

 国内の映画興行収入記録を塗り替えるなど一大ブームを巻き起こしたあの作品が、古典芸能として新たな命を吹き込まれる。能狂言「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」が、七月に東京、十二月に大阪で上演される。観世流シテ方で人間国宝の大槻文蔵(79)が監修、狂言師の野村萬斎(56)が演出する。人と鬼の悲哀に満ちた戦いは、幽玄の世界でどう表現されるのか−。 (谷岡聖史)
 「鬼の因果を描いてきたのが能で、狂言は鬼の人間らしさも見せる。そのフィルターを通して『鬼滅の刃』がさらに輝けば」。萬斎は会見で意欲を語った。
 吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)の漫画「鬼滅の刃」は、大正時代を舞台に人を食う鬼に立ち向かう「鬼殺(きさつ)隊」の活躍を描く。今回上演するのは、家族を鬼に殺された主人公の竈門(かまど)炭治郎が鬼殺隊員となり、鬼の中でも特に強力な「十二鬼月(きづき)」の一体、累(るい)と対決するまでの原作の六巻までの部分。累を文蔵、鬼の首領・鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)など三役を萬斎、炭治郎と妹の禰豆子(ねずこ)の二役を気鋭の能楽師大槻裕一(24)がつとめる。
 漫画が原作の能は少ないが、「大事なのは作者が何を言いたいか」と文蔵。原作は、元は人間だった鬼の過去を丁寧に描いていて、「鬼の悲しみをどう表現するのか探っていきたい」と語り、萬斎は「この世の中に鬼、いません? 人を食う鬼はいないかもしれないが、人の命を何とも思わない、鬼に近い存在はいる気がする」と力を込める。
 「鬼滅の刃」はアニメやゲーム、二・五次元ミュージカルにもなり、見せ場の戦闘シーンは鮮やかな視覚効果が駆使されてきた。

能狂言「鬼滅の刃」のポスター ©吾峠呼世晴/集英社 ©吾峠呼世晴/集英社・OFFICE OHTSUKI

 「木ノ下歌舞伎」主宰の木ノ下裕一(36)が脚本を担当する本作は、さまざまな能の間に狂言が入る「五番立(ごばんだて)」の形式を踏襲する一方で、「能狂言を見慣れた人には珍しい演出もある」と萬斎。ただ「能狂言の一番の肝は見立て。例えば扇が杯になり剣にもなる。リアリティーを感じさせる表現とは違い、皆さんの想像力に訴える」と、あくまでも伝統に則した舞台になることを強調した。
 「従来の能とあまり変わらんな、となるのか、これはまたえらい違う路線が引かれたな、となるのか」。その上で文蔵がこう付け足す。「私としては、能の世界が広がるような一歩になれば」
     ◇
 公演は、東京・銀座の観世能楽堂で七月二十六〜三十一日、大阪・大槻能楽堂で十二月九〜十一日。いずれも一万一千円。チケットは東京公演のみ抽選販売が始まり、第二次申し込みはローソンチケット=https://l-tike.com/play/kimetsu-nou/=で五月十日まで。大阪公演の販売は後日発表。

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