<そもそもQ&A>気候変動対策で住宅に注目 省エネにも健康にも繋がる脱炭素って?

2022年5月13日 06時00分
 地球温暖化、気候変動を抑える対策は、再生可能エネルギーの普及や自動車の脱ガソリン化、農畜産業、ファッションでの対策など非常に多くの分野に及びます。日本で注目されている分野の1つは住宅です。そもそも、なぜ温暖化対策で住宅なのか。Q&Aで整理しました。(デジタル編集部・福岡範行)
Q なぜ地球温暖化対策で住宅の話が出てくるんですか?
A 地球温暖化を招く二酸化炭素(CO2)は自宅で電気やガスなどを使うことによっても出ているからです。電気は火力発電所で発電するときなどにCO2が出ますし、ガスや灯油を燃やしてもCO2が出ます。全世界の人の営みによるCO2排出をなくしていくには、住まいの環境もCO2の出ない形に変えていく必要があります。日本ではCO2排出のうち16%ほどが家庭部門からです。

Q 住宅の脱炭素って急ぐ話なんですか?
A はい。住宅は数十年単位で使い続けます。日本は2050年にはCO2などの排出の実質ゼロを目指していますが、今建てた住宅で50年以降も使うものも相当あるでしょう。早めに対策を打つ必要があります。健康的な住まいづくりに繋がるものがあることも急ぎたい理由です。
Q なぜ住宅の脱炭素が健康の話になるんですか?
A 対策の方向性のひとつ「省エネ」の実現策として、冷暖房を使わなくても快適に過ごせる家づくりが目指されています。対策が進むと家の中の温度が一定に保たれやすくなり、急激な温度変化により命にもかかわる「ヒートショック」などの健康被害が起きづらくなります。
 日本では、冬に人がいる場所だけ暖めて脱衣所などは寒い家が多く、ヒートショックの要因になっています。厚生労働省の人口動態統計で2011年4月からの10年間について、冬季(12~3月)に亡くなる人の数が他の季節と比べてどのくらい増えるのかを都道府県別に調べると、断熱が進んでいる北海道や東北北部は増え方が小さい特徴があります。一方、関東の栃木などは20%超増えていました。増加の要因とみられる心臓や呼吸器などの病気は、家が寒いことで増える疾病と指摘されています。

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Q 住宅の脱炭素って、太陽光発電パネルを屋根に載せるとかじゃないんですか?
A CO2を出さない再生可能エネルギー由来の電気を使うのも大事な対策です。同時に省エネも大事です。日々の生活に必要なエネルギーが少なければ、電気代などを抑えられます。
 省エネは、再生エネの普及と両輪で進めれば相乗効果も期待できます。例えば、日々使うエネルギーを半分に減らせば、エネルギー由来のCO2排出も単純計算で半減します。その上で、再生エネを使う割合を増やせば、CO2はさらに減らせます。
 また、大気のCO2を吸収した木材を多く使うことや、建物を長く使うこと、解体時の廃棄物を減らすことも温室効果ガスの排出を抑えることにつながります。
Q 省エネは、例えばエアコンの設定温度を変えることですか?
A 環境省の発表によると、家庭部門のCO2排出の要因のうち、最も多いのが「照明・家電製品等」で全体の45%を占めました。その次が「暖房用」の22%で、「冷房用」と合計すると26%に上りました。エアコンの設定温度の変更は、ある程度の省エネになりますが、CO2排出ゼロに向けた省エネ対策では、そもそもエアコンを使いたくなる日を減らすことを目指しています。外の暑さ寒さが室内に伝わってきにくくなる「断熱」を強化することで実現できます。具体的にはアルミサッシの窓をやめたり、壁や天井の断熱材を厚くしたりします。
Q 最近の家は断熱がいいんじゃないんですか?
A 確かに新築住宅の8割は国の省エネ基準(断熱等級4)を満たしています。これまではこの基準が最上級だったこともあり、「高断熱」をうたう家も目立ちます。ただ、特に戸建て住宅でヒートショック予防と省エネを両立するには不十分な基準だとも指摘されています。
Q 十分な断熱ってどのくらいなんですか?
A 国は省エネ基準(断熱等級4)より高い断熱のレベルを3段階(断熱等級5~7)追加しました。ヒートショックを招く室温差をなくすには、冷暖房を増やさないとすると、2段階上の水準(断熱等級6)が必要との指摘があります。技術的には実現可能ですが、新築住宅でも省エネ基準より高い水準(断熱等級5以上)を満たす物はまだ少なく、普及促進策が必要です。
Q 断熱住宅を増やす政策はないんですか?
A あります。今国会で建築物省エネ法が改正されると、国の省エネ基準(断熱等級4)が新築住宅にも義務付けられます。健康と省エネの両立には不十分さがある基準ですが、義務化は見送られ続けてきたので大きな変化です。これまで最上級だった断熱等級4は、義務化されると、最低限満たすべき水準になります。今後、義務化水準の引き上げができるかが焦点です。
 建築物省エネ法などの改正案には、住宅を販売したり賃貸したりする時の省エネ性能表示を推進することや、既存住宅の改修に対する融資制度を創設することなども盛り込まれています。賃貸住宅でも、冷暖房がどのくらい必要か分かった上で契約するようになれば、省エネ性能が高い物件は有利になるでしょうし、既存住宅は省エネ基準を満たすのが1割強に留まっているので、改修促進は急務です。

断熱性能の高い木造賃貸アパートの前で笑顔を見せる建築士の内山章さん(左)とオーナーの岩崎祐一郎さん=横浜市鶴見区獅子ケ谷で

Q 新築住宅に求められる断熱の基準が上がる予定はあるんですか?
A 国は2025年度に省エネ基準を義務化した後、30年度までに1段階上の基準(断熱等級5)を義務にする方針です。健康と省エネの両立に必要との指摘がある2段階上の基準(断熱等級6)にする予定はありません。健康と断熱の関係の研究も進められており、議論の行方が注目されます。

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