<子どものあした・かつてのヤングケアラーから 今しんどいあなたへ>(下)「きみのせいじゃないよ」 精神疾患の親とその子を支援「ぷるすあるは」

2022年5月7日 07時19分

やなせたかし文化賞のメダルを手にする細尾ちあきさん=いずれもさいたま市で

 <お母さんが 泣いている どうしよう ボクのせいかも>
 絵本「ボクのせいかも…−お母さんがうつ病になったの−」(ゆまに書房)の一節。主人公の小学生の男の子は、うつ病の症状に苦しむ母親が理解できずに混乱する。元気がなくて怒りっぽくて、寝てばかり。「もしかしてボクのことキライになっちゃったのかな」。やがて主人公は病気が原因だと理解し、悲しみから解放されるという物語だ。
 絵本は二〇一二年、精神障害がある親と、その子どもや家族を専門家の立場から応援するNPO法人「ぷるすあるは」(さいたま市中央区)が制作した。かわいらしいキャラクターを色彩豊かに描くのは、精神科看護師の細尾ちあきさん。自身も小学生から高校生までの間、母親の世話を経験した。

絵本「ボクのせいかも…−お母さんがうつ病になったの−」から

 精神不安定で体調が優れない母親に代わり、買い物や炊事、洗濯、掃除などの家事を、きょうだいと一緒に担った。「学校の持ち物が準備できない。ちあき、どうしよう」と母に言われ、自分でそろえた。当時は「ヤングケアラー」という言葉もなく、自分が他の子と違う環境で育ったことに気付かなかった。
 成人して看護師になり、関西地方の精神科クリニックに勤務していた時、通院する親に付き添ってくる子どもの存在に気付いた。「精神疾患の患者さんが地域で暮らしていれば当然家族もいる」とハッとした。「ごはんがないけど、どうしたらいいの」という子どもの家を訪ねて米の炊き方を教えたことも。「こういうことに困っていたなあ」と自身の過去がよみがえった。
 その後、精神保健福祉センターで勤務時、同センターの医師だった北野陽子さんと出会った。北野さんは、細尾さんが画才を生かした紙芝居で子どもに病気の説明をしているのを見て「これなら小さい子にも伝わる」と感動。絵本制作の構想へとつながった。
 これまで病気を伝えるシリーズを四冊、不登校や発達障害など子どもの心に寄り添った絵本を三冊刊行。子どもの気持ちを知ってもらおうと、大人にも読んでもらうことを想定しており、巻末には子どもへの接し方の解説も付けた。
 また、頼れる大人がいない子どものため、緊急連絡の方法などをイラスト付きで易しく解説した「生きる冒険地図」(学苑社)を出版。運営するウェブサイト「子ども情報ステーション」(https://kidsinfost.net/)で閲覧できるようにしている。こうした活動が評価されて今年二月、アンパンマンの作者やなせたかしさんの遺志を継ぎ子どものための芸術文化活動を表彰する「やなせたかし文化賞」大賞を受賞した。
 二人が常に考えているのは「頑張っている子どもを尊重する」こと。父親や母親の具合が悪いのは「自分のせいかもしれない」と、ひとり悩んでいる子どもに「キミのせいじゃないよ」「ひとりぼっちじゃないよ」とメッセージを送る。
 同時に、子ども自身がヤングケアラーだと気付いていないケースは多く、周囲の大人がどう子どもに接したらいいかという情報発信にも心を砕く。「これからも子どもや親、周囲の大人に役立つ情報発信を充実させていきたい」(出田阿生)

関連キーワード


おすすめ情報