<食卓ものがたり>黄緑鮮やか、早採りの伝統 山東な(さいたま市)

2022年5月7日 07時25分

ハウスで青々と育った「山東な」を収穫する池田昌司さん=さいたま市岩槻区で

 ハウスを埋める鮮やかな黄緑色。さいたま市岩槻区の池田昌司(まさじ)さん(67)が、二十五〜三十センチに育った「山東(さんとう)な」の根元をはさみで切って収穫していた。
 明治初期に中国の山東省から伝わったとされる山東菜。埼玉県南東部で栽培されてきた伝統野菜で、小束用に早く収穫するため改良されたものを地元では「山東な」と表記する。「べか船」という小型の運搬船で運ばれていたことから「べか菜」とも呼ばれる。
 十六年前に亡くなった池田さんの父が戦後、春先に栽培していた。二代目の昌司さんが引き継いで三十五年。品種改良とは無縁で、同じ種を使ってきた。同区では九人の生産農家が、年間約二百四十トンを埼玉県内や東京都、神奈川県などのスーパーに出荷している。
 一方、正月の漬物用として栽培される「花芯(かしん)山東菜」も山東菜の一種だ。ハクサイより一回り大きく、埼玉県越谷市で、十数人の生産農家が約四十六トンを出荷している。
 池田さんは「山東な」を年六、七回収穫。最盛期は四〜五月、十〜十一月の春秋だ。以前、コマツナも作っていたが、十年前にやめて以来、山東な一筋。「コマツナの方が作業が楽だけどね」と笑う。山東なは暑さに弱い。夏場は直射日光を避けてハウスに黒いカーテンをかけたり、冬場は保温シートをかぶせたりして温度管理に気を配る。
 同じ土で何度も栽培するので有機肥料を使った土作りにも気を使う。病原菌や害虫による立ち枯れも心配材料。「昔より夏が暑くなっていて、大変です」
 さて、伝統のお味は。池田さんは「アクがなくて、くせもない。さっぱりしている」と評する。漬物だけではない。「おひたしやみそ汁、中華風スープの具などいろいろアレンジができるのがいい」と教わった。
 池田さんは栽培のローテーションを考え、集荷のタイミングを工夫する。「他に作っているところはないからね。いつでも食べられるようにしなきゃ」。少量生産の伝統野菜を支える心意気を感じた。
 文・写真 五十住和樹

◆味わう

 JA南彩は「山東な」のレシピをホームページで紹介している。塩もみして白ごまと一緒に酢飯に混ぜて作るいなりずし=写真、JA南彩提供=と中華丼、浅漬けサラダの3品。ルッコラやパプリカなどと混ぜる浅漬けサラダはオリーブ油とよく調和。シャキシャキした歯応えが楽しめた。山東なのネット販売はしていない。問い合わせはJA南彩=電048(720)8092。

関連キーワード


おすすめ情報

ライフスタイルの新着

記事一覧