<東海第二原発 再考再稼働>(43)失敗を教訓に成長した 原子力国民会議理事・檜山敏明さん(66)

2022年5月7日 07時34分
 日本原子力発電東海第二原発(東海村)の安全性向上対策工事の完了時期がまた遅れた。アメリカには明確な原子力安全目標があるが、日本にはないために、一方的に工事が追加されてどんどん工期が延びていく。安全を作るには、規制する側と規制を受ける側が対等に話し合えるようにしなければならない。
 「二〇五〇年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)」を掲げ、化石燃料をゼロにしていく政府方針の下では、ベースロード電源としての原発は不可欠だ。現在、電力需要の八割以上を火力発電に依存しているが、これを可能な限り下げるというなら、国産技術の原子力に電源を見いだすべきだ。
 昨年策定された経済産業省の第六次エネルギー基本計画では、三〇年の電源構成に占める原子力の比率は20〜22%。洋上風力や地熱、太陽光などの再生可能エネルギーは変動電源で、時間帯や気象条件次第ではダウンしてしまうので、「電気の質」に問題がある。電気自動車が普及すれば夜間に充電することになるが、それにはより安定したエネルギーが必要になる。
 東京電力福島第一原発事故は防ぐことができた許されない失敗だ。当時、津波が想定できていたにもかかわらず、法律の遡及(そきゅう)という仕組みがなかったため、東電の対策が遅れてしまった。
 原発は、福島の失敗を教訓に非常に安全性が高まっている。今は津波や地震などの自然災害、火災、テロ、さらには核燃料の破損というシビアアクシデント(設計時の想定を大幅に超える過酷事故)をも想定し、対策も充実した。追加で消防車やポンプ車を導入し、高台には電源車を置いた。科学技術は、失敗を教訓に安全性を高めるプロセスを経て成長するものだ。
 水戸地裁は昨年三月、東海第二原発の運転を、事故に備えた自治体の広域避難計画など防災体制の不備を理由に差し止めた。だが、避難計画策定は道半ばだ。完成しない段階で判決を出したのは、時期尚早だったのではないか。今後、行政と事業者がコミュニケーションを取りながら、共同作業で最適な計画を作り、訓練を通じてより良いものにしていくことになる。
 福島の事故では、年間被ばく量が一ミリシーベルト以上の地域の住民が避難させられた。だが、避難先での不安定な生活など二次災害で亡くなった方が大勢いたことを考えると、果たして適切だったのか。避難者のほとんどは、被ばく量が一ミリシーベルト未満だったが、われわれは自然界から年間平均二・一ミリシーベルトを受けている。それより低い線量でなぜ避難させられたのか。理性的に考えていただきたい。
 メディアにも、科学的知見に基づいた客観的な報道をお願いしたい。放射線に対する理解が広がらない中で、被ばくの恐怖をあおって風評被害を起こしている。サイエンスは複雑な領域に入ってきている。記者も勉強が必要だ。(聞き手・保坂千裕)
<ひやま・としあき> 1955年、小川町(現・小美玉市)生まれ。東京都立大大学院工学研究科修士課程を修了後、動力炉・核燃料開発事業団(現・日本原子力研究開発機構)でプルトニウム燃料の分析などに従事。科学技術庁(当時)核燃料規制課で安全審査にも携わる。東京工業大で博士号(工学)取得。九州大教授も務めた。福島第一原発事故後の原子力復興を掲げる「原子力国民会議」の理事。ひたちなか市在住。
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<お断り> 記事中「福島の事故では、年間被ばく量が一ミリシーベルト以上の地域の住民が避難させられた」とあるのは、「一ミリシーベルト以上の地域で実質的に避難が続いている」との趣旨です。国は現在、住民の帰還に向け、被ばく量を年間1ミリシーベルト以下に下げる長期目標を掲げています。なお避難指示は事故直後、年間20ミリシーベルト以上の地域に出されました。

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