躍動するチームに密着 『フェアか、ファウルか? 実況アナが書いた!中日ドラゴンズ偏愛コラム』 CBCアナウンサー・若狭敬一さん(46)

2022年5月8日 07時00分
 プロ野球の中日ドラゴンズの応援番組「サンデードラゴンズ」の司会や、試合の実況中継を担うCBCテレビ(名古屋市)の名物アナウンサー。新戦力を獲得するドラフト会議を前に、滝に打たれて願掛けする“偏愛ぶり”でも知られる。
 本書は立浪和義新監督体制の発足に合わせ、二〇一八年からネット上で発表したコラムをまとめた。「しゃべりなら緩急や強弱のテクニックでカバーできるけど、文章と構成だけで表現するのに苦労しました」。少年時代から軟式野球を続けるスポーツマン。いち野球ファンとして、興味が赴くままに執筆したという。
 未来の主砲と期待される石川昂弥(たかや)、トレード要員からエースに脱皮した大野雄大、少年野球チームと交流をするダヤン・ビシエド…。主力選手の秘めた思いや知られざるドラマを次々と明かす。その一方、番組で親しくしてきた立浪さんが、監督に就任してから一気に遠い存在になったことなど、フィールドとのリアルな距離感も伝わってくる。
 取り上げるのは選手ばかりでない。十一人いるスコアラーがどんな役割を果たしているかや、ボールの回転数や弾道を測って選手の実力を丸裸にする最新装置も紹介。プロ野球がさまざまなスペシャリストの総力戦だと実感できる。
 出身は岡山県倉敷市で、CBCに入局したのはたまたまだった。名古屋は郷土愛の強い土地柄。「もともとドラファンじゃないんでしょ」と視聴者に距離を置かれたこともあったが、今では地元中学生が自分のものまねをするほど溶け込んでいる。「名古屋の人びとに育ててもらいました」としみじみ感謝する。
 新体制で若手もベテランも奮起し、白星を重ねるドラゴンズ。長年付き合ってきた同世代の選手らがコーチなどの重責を担い、まいた種が収穫期を迎えている。「その他大勢のアナウンサーにはなりたくない。一年でも長く続けて、若い選手が優勝する瞬間に立ち会いたいです」
 的確に状況を描写し、タイムリーに情報を提供し、良いコメントを引き出すのが実況の仕事。その“話芸”も円熟味を増してきた。「スマホでも試合結果が分かるけど、表現力でファンをテレビやラジオに向かせたい。それには勢いで盛り上げる『足し算』だけでなく、あえて抑制する『引き算』も必要なんですよ」
 東京ニュース通信社発行、講談社発売・一六五〇円。 (岡村淳司)

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