いきもの六法 日本の自然を楽しみ、守るための法律 中島慶二、益子知樹監修、山と渓谷社いきもの部編

2022年5月8日 07時00分

◆野遊びする人の悩みに即応
[評]内澤旬子(文筆家・イラストレーター)

 キャンプや山歩きに絶好の季節到来だ。山を散策していて綺麗(きれい)な花が群生していたとしよう。画像検索で種名は判明した。珍しい種だった。では以下の行為のうち違法になるのはどれか。
 (1)写真をSNSに上げる(2)摘み取って押し花にする(3)株を掘り持ち帰る(4)種だけを採って持ち帰る(5)育て増やした株を販売する
 実はこれ、種や地域がどの法律で保護対象になっているかで禁止事項が少しずつ違ってきてしまうのだ。文化財保護法なのか自然公園法なのか、はたまた種の保存法なのか。一体どう確認すれば良いのだろう。
 本書はそんな悩みに応えるべく日本の自然を守りつつ楽しむための法律群を一挙に紹介、解説している。
 実はこれらの法律を網羅するのは簡単ではない。複数あるだけでなく、管轄が文化庁や環境省など四省庁に分かれている上に地方自治体独自の条例も絡む。それぞれの法律や条例全てに照会してみないと、採っていいものかわからないだけでなく、触っただけで違法となる可能性すらあるのだから恐ろしい。
 しかし本書はこの法律群の種類と意義や目的、煩雑さの理由を解説した後で、昆虫採集、釣り、キノコ狩り、狩猟など実際に野遊びする人の目的に沿って章を立てている。保護種や地域の紹介の他に昆虫採集のために倒木を壊す、巣から落ちた雛(ひな)を飼うなど、野遊びでやりそうな具体的行為のQ&Aを立て、法に触れるか、法に触れなくても環境破壊につながる「推奨できない行為」にあたるかを説明。チェックシートや日々変わる登録種や地域の検索方法を載せるなど、使う側の都合をよく考えた編集となっている。
 石や落ち葉すら持ち帰れないところがあるかと思えば、希少種の抜け殻や死骸なら持ち帰っても良い場合もある。
 これからの野遊びは、自然環境保護が大前提とはいえ、壊すことを恐れるあまりに自然と一切触れあわないのももったいない。しっかり楽しむためにも、読んでおきたい。
(山と渓谷社・1980円)
<中島> 国立公園研究所長、江戸川大教授。
<益子> 茨城県職員を経て水産コンサルタント。

◆もう1冊

須黒達巳著『図鑑を見ても名前がわからないのはなぜか? 生きものの“同定”でつまずく理由を考えてみる』(ベレ出版)

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