#KuToo 石川優実さん「自分の感情を大事に」 行動すれば何かが変わる <空気は、読まない。>2

2020年3月9日 08時00分
 周囲の「空気」を読むのではなく、自分が信じる道を突き進む人たちにインタビューする連載<空気は、読まない。>。第2回は、「#KuToo」運動を始めた俳優の石川優実さんです。世の女性たちに「おかしいことはおかしい」と声を上げる勇気を与えた行動の根底にあったものとは。 (聞き手・北條香子)

◆他者が決定権を握ることへの反抗

 #KuTooは誤解されやすいのですが「ヒールを履くな」という運動ではありません。ヒールを履くことを強制すること、他者が決定権を握ることへの反抗です。マナーの否定ではなく、マナーに男女で差があるのはおかしいと。けがをしたりして実害が出ていますから。
 ヒールが原因で仕事を辞める人もいるのに、根性がないからって言われる。男性もヒールを履いていて、女性だけが辞めていくんだったら、まだ分かる。労働条件を男女同じにした上で判断してほしい。女性が結婚や妊娠で辞めてしまうのも制度が整ってないからなのに、女性のせいになる。

パンプスやハイヒールを強制しないでと訴える「#KuToo」活動のイメージ

◆当たり前とされているもの全て、見直していい

 安倍政権の発言や政策はジェンダーギャップ(男女間格差)をなくそうとしているとは思えないですね。少子化などの問題を女性の問題にしたがっているような気がします。
 「分断をあおるな」「怒るのは良くない」と言われます。なぜ怒っちゃだめなのか。既にある分断や差別を可視化させただけなのに。それを悪いことと決めつけているのは誰なんだろうと感じる。守って良い方向に行くならいいけれど、そうじゃない現状がある。当たり前とされているもの全て、一つひとつ見直してもいいんじゃないかな。

◆肌の露出「当たり前」と思わされ、抵抗あっても言えなかった

 もともとは空気を読むタイプ。思ったことは言ってこなかった。空気を読めないと言われるのが嫌で、読むように努めていた。中学や高校は、何の説明もなく校則が押しつけられて、従わないと成績が落とされ、内申点が悪くなる。そうなると従うのが当然だし、おかしいと思っても言わないですよね。中学でいちばん意味が分からなかった校則は「三つ編み禁止」。理由は分からないままだった。
 十八歳で芸能界デビューして、グラビア撮影が多かったんです。だんだん肌の露出が増えていきました。抵抗はあったけど、脱がなきゃいけないように話が進んでいく。当たり前と思わされていた。最初は売れたい気持ち、その後は「脱いだからには何とかしないといけない」という気持ちを利用されていた。
 仕事を振ってくれるという男性に性的行為を強要されたこともあります。「これをしないと売れないぞ」って言われている感覚でした。断ると、やる気がないと言われる。売れたいなら女の人は我慢しなきゃいけないんだと思っていた。

◆#MeTooでグラビア時代の性被害を告白、女性差別に気づく

 意識が変わったのは、主演映画「女の穴」(二〇一四年公開)の吉田浩太監督に「石川はもっと自分に自信を持て」と言われたことがきっかけ。芝居をやっていくとはそういうことだ、人として輝くには必要不可欠なことだと熱心に怒ってくれた。根拠がなくても、頑張って自信を持ってみようかなというところが始まりでした。
 本当に徐々に徐々に、時間をかけて。私は何を嫌だと思ったんだとか、何をうれしいと思ったんだとか。そんなことも認識できていなかったので。一七年末に「#MeToo」でグラビア時代の性被害を告白したことで、意識改革は一気に加速しました。自信が持てなかったのは、今まで「おかしいぞ」って思っていたものの根底に女性差別があったからだと分かって、一気に全部解決した。

◆自分を信じ、自分で考える癖を

 自分で考える癖がついてない人が多いと思うんです。私もそうでした。でもそれって全然、自分のことを信じてあげていない証拠。自然と自分から湧いてくる感情を、最も大事にしてあげるべきだと思うんです。自分を尊重していれば、他人の意思も尊重できるのではないでしょうか。
 
 (世間の空気に)流されたいと自分で明確に思っているなら流されればいい。けど、どこかでちょっとでもモヤモヤしていて流されている状態なら、もうちょっと深く考えたら、何か違う、全く違う人生になるかもしれない。

◆自分のアクション1つで何かが変わることもある

 #KuTooを通じて、自分のアクション1つで何かが変わることがあり得ると思えた。選挙だって、自分は一票だけでも、みんなが集まれば絶対に変わるという実感があったから、「行かないとやべぇ」という感じに変わりました。音楽ライブに行く気持ちで街頭演説を聴きに行くと面白くて。面白いと思える自分で良かったなと思う。
 アクションを起こすことって、もっと気軽でいい。#KuTooも「いつか女性が仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけないという風習をなくしたい」というツイッターのつぶやきから始まった。
 批判に見せかけた誹謗中傷はすごく多い。でも、当たり前だからって諦めたことを変えていくことは、すごくやりがいがある。過去の自分、過去の自分みたいな人を救いたいという思いはずっと持っています。
 石川優実(いしかわ・ゆみ) 俳優、ライター。1987年、愛知県小牧市生まれ。2005年、スカウトされ芸能活動を開始。19年2月、「靴」と「苦痛」をかけて、女性だけがヒールの高い靴などの着用を強制されることは性差別だと訴える「#KuToo(クートゥー)」運動を開始。ネット署名には3万2000人超の賛同が集まっている。同年10月、英BBC放送の「今年の100人の女性」に選出。#KuTooは新語・流行語大賞でトップテン入りした。

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