生活保護世帯の進学率 地域間で最大4倍の格差 親から子の「貧困の連鎖」助長される懸念  

2022年5月8日 06時00分
 生活保護世帯の子どもの大学・短大、専門学校への進学率について、都道府県の間で最大4倍の格差があることが、研究者やケースワーカーでつくる「生活保護情報グループ」の調査で分かった。全世帯の進学率に比べ、生活保護世帯の進学率は低い傾向にあるが、その中でも大きな地域差が生じている。立命館大の桜井啓太准教授(社会福祉学)は「地域間格差の是正が急務だ」と強調。進学率の低さは、親から子への「貧困の連鎖」を助長しかねず、生活困窮者の支援団体からは政府に対策を求める声が上がる。(我那覇圭)

◆20年度、首位大阪は4割超、長野は1割超

 調査は2019、20年度を対象に実施。上位の東京都や大阪府が両年度とも40%を超えたのに対し、最下位は19年度が山形県の16・7%、20年度が長野県の11・1%。首位と最下位の格差は19年度が2・8倍、20年度が4・1倍だった。全世帯では、20年度の首位の京都府(83・1%)と最下位の沖縄県(60・4%)の差が1・4倍で、生活保護世帯の格差がより大きい傾向が表れた。
 厚生労働省によると、20年度の進学率の全国平均は、全世帯の73・4%に対し、生活保護世帯は37・3%だった。しかし、同省は都道府県ごとの数値を個別には公表していなかったため、桜井氏らのグループが「現状を分析し、自治体ごとの実効性ある貧困対策につなげる必要がある」と情報公開を請求。生活保護世帯とともに、20年度の全世帯の進学率をそれぞれ都道府県別に算出した。
 桜井氏は「地方には大学などが少なく、そもそも進学先が限られる。NPOによる学習支援なども手薄になりがちで、進学率を下げる要因になっているのでは」と分析している。
 調査結果はグループの交流サイト(SNS)で公開している。一方、厚労省は結果を踏まえ、都道府県別の数値を公表する方向で検討を始めた。

◆進学なら支給除外 自立必須であきらめた例も

 桜井氏らの調査結果について、東京都や宮城県で高校生らに無料学習会を開いている認定NPO法人「キッズドア」の渡辺由美子理事長は「住む地域で進学率に差が出るのは望ましくない」と訴え、大学などへの進学を認めていない生活保護制度の見直しを求める。
 生活保護世帯の進学率の地域差が全体の進学率の地域差より大きくなった背景に、自宅から通える範囲に多くの大学がある地域より、通える範囲に大学が少ない地域で生活保護世帯の負担が大きくなるとの指摘がある。
 現行制度では、生活保護世帯で大学などに進学した子どもは支給の対象から外れ、自立して生活する必要がある。親元の世帯も対象家族の減少で保護費を減額される。生活費や学費を賄うのは容易でなく、自宅を離れて進学すれば、家賃などでさらに出費はかさむ。
 キッズドアでは、生活保護を利用するひとり親世帯の生徒で、教師になる夢を抱きながらも、負担増に耐えられないと進学をあきらめた例があるという。渡辺氏は「本人にはどうにもできない理由で勉学の機会を奪っていいのか。進学によるスキルアップが長期的には社会にも役立つ」と語り、公的支援の拡充に加え、生活保護世帯の子どもの進学を認めることを求めた。

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