東京と大阪で同時期にボラが謎の大量死 新月での大潮が酸欠招いた?

2022年5月8日 18時00分
 東京都内の川でボラ約1000匹が大量死する出来事があった。同じ頃、大阪市内の川では約7500匹のボラが大量死した。ともに市街地を流れる川。群泳するボラが集団で死ぬのはまれではないようだが、約400キロ離れた場所で同時期に起きた理由はあるのか。地震の前触れの「宏観こうかん異常現象」ではないかとの言説も飛び出した。果たしてどうなのか。(特別報道部・北川成史)

大田区の呑川で目撃された魚の大量死。ボラとみられる=東京都提供

 東京都大田区のJR蒲田駅のそばを流れ、羽田空港近くの東京湾に注ぐ呑川。大量死の現場を見ようと、5月上旬、蒲田駅から川沿いの道を歩いた。
 コンクリートの護岸が切り立ち、河原はない。黒みがかった緑色の水がよどみ、底まで見通しづらい。場所によってはヘドロっぽい臭いが漂った。
 東京都によると、3月6日、この呑川で魚が死んでいると区に通報があった。区職員は翌7日、蒲田駅から約1キロ北の双流橋から大平橋付近で、体長12、3センチのボラを中心に約1000匹が死んでいるのを確認した。
 水質テストではシアンや六価クロムなどの毒物は検出されなかった。ただ、水中(上層)の溶存酸素量が1リットル当たり2.8ミリグラムで、2020年度の平均値6.4ミリグラムの半分以下だった。
 清野成美・都水環境課長は「毒物による皮膚の変色や損傷は見られず、酸欠の可能性が高い」と推し量る。
 都島しょ農林水産総合センターによると、ボラは世界中の暖かい海に分布。都内の川の下流域では春~秋、東京湾からの遡上魚が生息する。雑食で動物プランクトンや藻、底の泥の有機物などを餌にする。
 大日本水産会魚食普及推進センター(東京都)によると、ボラが大量死する主な原因は①酸欠②雨などで底が混ぜ返され、泥などがエラに詰まる③干潮で取り残される―の3つ。今回は水温上昇でプランクトンの活動が盛んになり、酸素が多く消費されたことなどによる①ではないかという。

大阪市の平野川で大量死していた魚。こちらもボラとみられる=大阪府提供

 大阪市でも3月7、8日、大阪城に近い平野川と第二寝屋川で、体長約20センチのボラ約7500匹が死んでいるのが見つかった。
 大阪府立環境農林水産総合研究所の山本義彦主任研究員によると、毒物の検出はなかった。平野川では3月2日、1000匹以上の魚が密集し、水面から顔を上げる「鼻上げ」をしていたのを市職員が確認している。この状況と併せ、酸欠が原因と考えられるという。
 東京と同時期に起きた背景について、山本氏は潮の干満との関係に言及する。
 3月3日は太陽と月の引力が重なる新月にあたり、大潮の時期だった。潮の干満が大きいと、都市の川底のヘドロがかき回される。酸素が不足した状態のヘドロの中の硫化物や鉄は、巻き上げられ、水中の酸素と結合する。すると水中で魚が取り込める酸素が少なくなるという構図だ。
 都の清野氏は、大量死の数日前の雨で、川に水が流れ込み、かき回された可能性にも触れる。

◆ネットで広がる「地震の前兆」説は科学的根拠なし

 相次いだ魚の大量死について、ネット上で地震と関連づける話も見られた。確かに、地震の前兆として「ナマズが騒ぐ」「深海魚が浮き上がる」といった魚絡みの言い伝えもあるが、科学的に立証されていない。
 宏観異常現象を受け付けている高知県南海トラフ地震対策課にも、魚の大量死に関する情報提供はない。
 深海魚と地震の言い伝えは迷信という研究をまとめた東京学芸大の織原おりはら義明非常勤講師(固体地球物理学)は「人間には難を逃れるため、将来を知りたいという欲求がある」と指摘。魚の大量死と地震の結びつけも、人間のそうした心理のためではと推測していた。

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