海の微細なプラスチックごみ、高度経済成長期に急増 10年ごとに10倍に 日本近海

2022年5月9日 12時13分
 東京大学と日本財団は4月19日、海洋プラスチックごみ対策として3年間取り組んだ共同事業の研究成果を発表しました。採取した海水や過去の海水試料を調べたり、微細なプラスチックが人体や貝に侵入した場合に及ぼす影響を評価したりしました。海水に含まれる細かなプラスチックの個数が、高度経済成長期にはおよそ10年ごとに10倍に増えていたことが分かりました。

◆2010年代、再び増加の兆し

1950年代の日本近海の海水から見つかったプラスチック(高橋一生東京大教授提供)

 農学生命科学研究科の高橋一生教授らは、水産庁所管の国立研究開発法人、水産研究・教育機構で保管されていた過去約70年分(1949~2016年)の日本近海の海水試料7000本に含まれていた微細なプラスチックを分析しました。すると、1953年に最初のプラスチックを発見。さらに、50~80年代までおよそ10年で10倍のペースでプラスチックの個数が増えました。その後は増え具合が緩やかになりましたが、2010年代に入ってから再び増加の兆しが見られています。高橋さんは「世界に類を見ない約70年間の貴重な海水試料。さらに分析を進めていきたい」と話します。

◆マイクロプラスチック、人体への影響は

 微細なプラスチックの人体への影響はどうでしょうか。工学系研究科の酒井康行教授らは、人の培養した腸管細胞に微細なプラスチックを投与して、人体への取り込み経路を明らかにしました。数百ナノメートル(ナノは10億分の1)の粒が腸管を通り抜けたのです。そして、体内に取り込まれた後は、免疫系細胞にも取り込まれ、異物として認識して対処しようとする反応を引き起こしました。「体内への蓄積も含めて長期にさらされたときの影響を研究する必要がある」といいます。
 海洋生物への影響も分かってきました。井上広滋こうじ・大気海洋研究所教授らは、二枚貝のムラサキイガイの水槽に微小なプラスチックの粒を入れる実験をしました。その結果、粒子の大きさにより貝の体内にとどまる時間が異なりました。1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の粒は、初期の排出は速いが一定量は40日以上とどまるのに対し、90マイクロメートルは初期の排出は緩やかでも28日目までに全て排出されました。
 この事業を企画し東京大に研究費を提供した日本財団の笹川陽平会長は「人類に対して海洋の危機を訴える大きなきっかけになる」と期待します。東京大の藤井輝夫学長は「海洋プラスチックを直接測って、得られた科学的知見は対策の基盤になる」と話します。さらに今後3年間研究し、海洋での微小なプラスチックの動きや生体への影響などの詳しいメカニズムを追究します。(増井のぞみ)

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