軍事パレードで見えたロシア軍の台所事情 規模は縮小、学生の参加 ウクライナ侵攻で多大な犠牲

2022年5月10日 06時00分
モスクワで行われた軍事パレードで行進するロシア軍兵士(AP)

モスクワで行われた軍事パレードで行進するロシア軍兵士(AP)

 モスクワで9日に行われた対ナチス・ドイツ戦勝記念の軍事パレードは、ウクライナ侵攻におけるロシア軍の苦戦を反映し、例年と比べて規模が大幅に縮小された。プーチン大統領は「ナチズムとの戦い」を掲げ、長期戦を見据えるが、ロシア軍兵士の士気低下や兵器の消耗は深刻だ。米国はロシア軍の進軍が「停滞している」と分析している。(ワシントン・吉田通夫、ヨーロッパ総局)

◆対ドイツ戦と侵攻を重ね愛国心あおったプーチン氏

 「広大な祖国の多くの地域から、ドンバスや戦闘地域からやってきた兵士や将校が、ここ赤の広場で肩を並べている」
 プーチン氏は式典での演説でそう語り、国民の愛国心をあおった。軍事パレードには、ウクライナの戦闘に投入された車両や兵士が登場。今回の侵攻を、第2次大戦でのナチス・ドイツとの戦いに重ねる思惑があったとみられる。
 だが、パレードに参加した軍人は昨年より1000人少ない1万1000人で、「ユナルミヤ」と呼ばれる軍事学校の少年少女や軍事アカデミーの学生も含まれていた。軍用車両も131台と戦勝75年の2年前の6割にとどまり、ロシア軍の苦しい台所事情が透けた。

◆進軍は停滞、一部では後退

 米国防総省の分析によると、ロシア軍はウクライナ東部ドンバス地域に部隊を集中させるため、北部と南部から部隊を移動させているが、ウクライナ軍の抗戦で進軍は全体的に停滞。戦勝記念日を念頭に置いた変化は見られていない。
 南東部の要衝マリウポリでは、アゾフスターリ製鉄所を包囲していた部隊は2000人ほどを残してドンバス方面に北上を始めた。別の部隊は北側からドンバスを目指して南下しているが、いずれもウクライナ軍が激しく抵抗しているという。
 また、ロシア軍はドンバスの北西にあるウクライナ第2の都市ハリコフの奪取も目指しているとみられるが、ウクライナ軍の攻撃を受けて5月上旬に30~50キロほど後退した。

◆事実上の「動員法」に署名

 英国防省の分析では、これまでに1万5000人以上のロシア兵が死亡。例年パレードの華となってきた精鋭の空挺部隊も侵攻当初の首都キーウ(キエフ)掌握作戦に失敗し、多数の犠牲が出たとされる。
 プーチン氏は演説でウクライナ侵攻は「正しい決定だった」と強調した。ロシア国内に広がる厭戦気分に配慮し「戦争」という言葉こそ使わなかったが、この日、ウクライナでの軍事作戦で死亡したり、負傷した兵士らの子どもが無試験で大学に入学できるよう定めた大統領令に署名。十分な生活費や教育費が確保できない家庭の男性らの志願を促す事実上の「動員法」と受け止められている。
 ロシアで対独戦勝記念日は「不戦を誓い、平和を享受する日」との意味合いがあるため、プーチン氏は今後、新たな動員に向けた指示を出す可能性がある。
 プーチン政権に近い政治情報センターのアレクセイ・ムヒン氏は「プーチン氏は勝利の価値を旗印に、社会をまとめ上げようと腐心している」と語った。

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