<ぱらぱらじっくり 教育に新聞を>北区の新聞活用教育 春、新たなNIEを始めた

2022年5月10日 07時37分

発表を終えてホッとした表情の陽向くんに、級友たちが大きな拍手を送った=東京都北区立王子桜中学校で

 東京都北区。JR王子駅に近い区立の王子桜(おうじさくら)中学校はこの春、新聞活用の新たな一歩を踏み出した。
 名付けて「Today’s NIE」。クラスでその日の日直当番になった生徒が、学校に届いた朝刊各紙から気になった記事をひとつ選ぶ。A4サイズの専用の紙に(1)選んだ理由(2)記事の要約(3)記事を読んで考えたことや疑問、みんなに考えを聞いてみたいこと−を記入する。そして下校前の帰りの会で級友らに発表するという取り組みだ。
 四月下旬。昼休みの時間に五クラスある三年生のフロアを訪ねた。どの教室にも新聞を囲む輪ができている。
 「先生この記事、すごくない? ランドセルの試着ができるんだって」。女子生徒の一人が興奮ぎみにNIE担当の佐藤晶子(まさこ)教諭に話しかけてきた。「私ホントは水色が良かったんだけどパパが赤が安いから赤にしておきなって」。小学校入学時の記憶がよみがえったらしい。
 しかしその生徒は日直ではなかった。日直が記事選びに苦労する様子が教室で繰り返されるうち、手伝ってあげたり、何げなく新聞を開いたりする生徒の行動が増えた。
 「これまでは、せっかくの新聞が読まれずに平積みになっていたことも。今ではみんなで新聞を何紙も広げているんですよね」と佐藤教諭は手応えを実感している。「世の中の事象についての問題意識を、自分に引きつけて考えることのできる生徒に成長してほしい」。その願いから試行錯誤しつつスタートさせた学び。まずは三年生から始めたが、一、二年生にも広げていきたいという。
 わいわいにぎやかに新聞を囲む生徒たちの中で、やはり日直の本人だけは顔つきが真剣だ。一面に載るロシアのウクライナ侵攻の報道を選ぶ日直もいれば、逆に両国の大きな記事の片隅に載る中国関連の囲み記事に関心を抱く生徒も。別のクラスの日直は、凍死体で見つかった中学生がいじめに遭っていた問題についての社説を読み込み、自分の意見を用紙に記していた。
 三年一組の日直の陽向(ひなた)くんは、野球が好き。「難しかったけど、友だちと一緒に記事を探すことができた」と、オリックスの宮城大弥投手が4試合目の登板で今季初勝利を手にした記事を選んだ。
 帰りの会。記事を手に陽向くんが「精神面で失敗しても立ち直ることでいい結果が出る。僕は失敗するとひきずってしまうことがありますが、立ち直れるようにがんばりたい」と感想を発表すると、大きな長い拍手がおき、教室は温かな雰囲気に包まれた。 (東松充憲)
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 東京都北区のNIEについて随時紹介していきます。

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