不妊治療 保険拡大スタート 効果と負担 どう選択

2022年5月10日 10時21分
 4月から公的医療保険の適用が広がった不妊治療。ただ、医療機関の判断で追加される治療の全てが対象となるわけではない。「妊娠の可能性を高めるため」と、最初から全額が自己負担となる自由診療での治療を打ち出す医療機関もあるなど、患者にとっては分かりにくさも残る。また、原則としてパートナーと2人で説明を受けるよう求められるため、日程の調整で治療開始が遅れるケースもあるという。 (佐橋大)

■“ハードル”低く

 保険診療の対象は、卵子を取り出して受精させた上で子宮に戻す体外受精(顕微授精含む)と、排卵時期に精子を子宮に入れる人工授精など。体外受精については、これまでも国の助成制度はあったが、平均で一回五十万円以上かかっていた。愛知県産婦人科医会の会長で、さわだウィメンズクリニック(名古屋市)院長の沢田富夫さん(70)は「負担が三割で済む意義は大きい」と説明。四月以降、保険診療を望む人が多く受診し、体外受精などへのハードルが低くなったことを実感しているという。
 一方で、妊娠が特に難しい人の治療効果を上げるには、保険の適用範囲を超えた治療が必要という声は根強い。例えば体外受精のため、採取前に卵子の発育具合を確かめる超音波検査の場合、保険で認められるのは原則月三回まで。ただ、名古屋市などで不妊治療のクリニック三施設を運営する浅田レディースクリニックの浅田義正院長(67)は「三回を超える検査を実施して薬などを調整しないと、卵が育たない人は大勢いる」と指摘する。

■医療機関で違い

 保険診療と自由診療を組み合わせる「混合診療」は禁止されており、保険適用分も含め全額自己負担となる。医療機関によっては、患者の治療に差をつけたくないとして最初から自由診療だけを掲げるところも。東京都内のクリニックはその一つだ。三月にホームページで「どの患者にも最先端の治療を提供したい」と表明した。体外受精で第一子を出産し、再び不妊治療を考えていた埼玉県の女性(33)は「妊娠の可能性を高めるにはお金が必要と、改めて実感した」と話す。
 保険適用の拡大を受け、都は四月五日から、五カ所に都民らに向け相談窓口を設けた。保険診療と自由診療の違い、保険診療でカバーされる範囲といった相談にソーシャルワーカーらが電話や面接で相談に応じている。窓口の一つ、都保健医療公社豊島病院によると、これまでに数件の相談があったという。不妊に悩む人を支援するNPO法人「Fine(ファイン)」(東京)理事長の松本亜樹子さんは「保険診療の範囲でいいのか、自由診療でもいいのか−。自分はどんな治療を受けたいかを、まずは医療機関などに相談して考えをまとめてほしい」と助言する。

◆2人受診 壁にも

 保険を適用するには、医療機関が治療計画を作って患者とパートナーに説明。同意を得ることが条件となる。2人そろっての受診ができない場合は、ビデオ通話を使ったり、同席できなかった人に医師が後日説明したりすることが必要だ。
 都内で三つのクリニックを経営する杉山産婦人科理事長で産婦人科医の杉山力一さん(52)は「計画を説明する時間を設定するのに手間がかかり、保険診療の開始が遅れた例が何件かあった」と話す。不妊治療はどちらか一方の問題ではなく「2人で取り組むもの」という意識付けになると考えられる半面、「治療と仕事の両立の推進に逆行している」という意見もある。
<不妊治療> 体外受精は、治療開始時に女性が43歳未満であることが保険適用の条件で、回数の制限もある。人工授精は年齢制限を設けていない。精子の採取など男性の治療は年齢制限がない。

関連キーワード


おすすめ情報

健康の新着

記事一覧