韓国・尹政権発足で対北朝鮮はどう変わる?融和から厳格姿勢へ 「非核化の方法論ない」と懸念も

2022年5月11日 06時00分
 北朝鮮の非核化に厳格な姿勢を示す韓国の尹錫悦ユンソンニョル新大統領が10日、就任した。南北融和を志向した革新政権から保守政権への交代で、東アジアの安全保障の構図は大きく変わる。核兵器の高度化を進める北朝鮮が尹氏との対話に応じる見込みは薄く、米韓の軍事関係者は北朝鮮の抑止に向け、日本との連携強化に期待を寄せる。(ソウル・木下大資、相坂穣)

就任式で演説する韓国の尹錫悦・新大統領(AP)

◆「非核化に切り替えるなら北の生活改善へ」

 10日午前、ソウルの国会議事堂前で行われた就任式。尹氏は北朝鮮の核開発について「平和的解決のため対話の扉を開いておく」としつつも、「核開発を中断して実質的な非核化に切り替えるなら、国際社会と協力し、北朝鮮の経済と住民の生活を画期的に改善できる大胆な計画を準備する」と述べ、原則的な立場を明確にした。
 文在寅ムンジェイン前政権は、南北関係の改善を進めながら、段階的に非核化を実現しようとした。北朝鮮が反発する米韓合同軍事演習を縮小。2019年の米朝首脳会談の決裂後は、停滞した対話を再開する糸口として対北制裁の一部解除を提案した。尹氏はこうした政策を転換し、不可逆的な非核化を南北関係の前提に据える。
 ただ、「米国の敵視政策の撤回」を主張する北朝鮮が尹氏の呼び掛けに応じる可能性は低い。韓国・北韓大学院大の梁茂進ヤンムジン教授は「新政権には非核化の方法論がない」と懸念する。

◆北が核実験との見方も

中国の王岐山国家副主席と握手する韓国の尹新大統領(AP)

 北朝鮮は4日に大陸間弾道ミサイル(ICBM)の可能性のあるミサイルを、7日には潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を立て続けに発射。尹氏へのけん制を強めている。
 韓国の情報機関・国家情報院トップの朴智元パクチウォン氏が韓国紙のインタビューに明かしたところによると、中国は最近、数回にわたり北朝鮮にICBMの発射や核実験を中断するよう促した。北朝鮮メディアは4日と7日のミサイル発射に言及しておらず、中国に一定の配慮をした可能性もある。
 中国の王岐山おうきざん国家副主席は10日午後、尹氏と会い「朝鮮半島の非核化と恒久的な平和を推進する」との立場を伝えた。それでも、専門家の間では中国の北朝鮮への影響力にも限界があるとの見方が強い。朴氏は、バイデン米大統領が訪韓する20日までに北朝鮮が核実験に踏み切るとの見方を示している。

◆日韓関係の改善も不可欠

 尹氏は日米韓の安全保障協力を強化し、北朝鮮の脅威に対抗する方針。就任演説では直接の言及はなかったが、「自由」や「民主主義」という言葉を繰り返し、米国と足並みをそろえる姿勢を鮮明にした。
 4月に訪米した政策協議団は、米軍の戦略兵器を韓国周辺に展開して「拡大抑止力」を強化する方向で協議しており、在韓米軍の元幹部は「米韓合同軍事演習がやりやすくなる」と尹政権の誕生を歓迎する。北朝鮮に対する抑止力の強化には日韓関係の改善も欠かせない。韓国軍准将(予備役)の権泰煥クォンテファン氏(61)は北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃するには「日米韓のリアルタイムの情報共有が不可欠だ」と指摘。文政権が破棄しようとした軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を「安定的に運用する必要がある」と説いた。

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