国籍あっても日本に避難できず ウクライナからデンマークへ避難の母子ら 保証人巡る制度のはざまに

2022年5月11日 06時00分
 ロシア軍のウクライナ侵攻の戦禍を逃れ、首都キーウ(キエフ)からポーランドを経てデンマークに避難したオレナ・バロワチさん(40)は、日本国籍を持つ息子ヒロ君(5)と母親の3人で、日本への避難を希望してきたが、2カ月間かなわない状態が続いている。今は不要になったが、当初、受け入れには日本に住む保証人が必要だったため、制度のはざまに入ってしまった状態だ。(片山夏子)

戦禍を逃れ、キーウからポーランドに避難した時のオレナ・バロワチさんと息子のヒロ君=3月、ワルシャワで(フォトジャーナリスト・小原一真さん提供)

◆都内で一時暮らしたことも…

 オレナさんは旅先のネパールで日本人男性と知り合い結婚。5年前にヒロ君が生まれた後、夫とともに都内で一時暮らしたが、夫の家族とうまくいかず、ヒロ君と帰国。その後、疎遠になってしまったという。
 ロシアがウクライナに侵攻した前日の2月23日は「ごく普通の日だった」とオレナさん。ヒロ君を幼稚園に迎えに行き、母親ソフィアさん(64)と買い物して帰った。だが翌朝5時、弟(34)から「急いで荷物をまとめて。戦争が始まった」と電話が入った。
 弟の車で両親と息子とキーウ南部の村に避難。爆撃音で眠れず、恐怖で泣くことすらできなかった。隣の村まで爆撃され、夜中でも空が明るく照らされた。教会の人道支援組織の車で村を脱出したが、弟と父(73)は「自分の人生の場所を離れたくない」と残った。

◆大使館「保証人はいた方がいい」

オレナさんの避難経路

 3月7日早朝にポーランド・ワルシャワに。日本大使館に行き、息子は日本国籍があると伝え、避難民としての受け入れを訴えた。大使館に「日本に住む保証人が必要だ」と言われたが、夫との連絡は途絶えていた。3月後半に保証人が不要になると知り、大使館に電話したが「保証人はいた方がいい。ビザ発給にどれほど時間がかかるか分からない」と告げられた。
 ワルシャワは避難民であふれ、住む所も仕事の確保も難しく、避難民への支援策を明示していたデンマークへの避難を決意。3月28日、バスで20時間かけコペンハーゲンに着いた。日本の政府専用機がワルシャワに来ると聞き、翌日、日本大使館に電話すると「すぐ戻ってくれば乗れる可能性がある」と言われた。でもヒロ君らは長旅で体調を崩し寝込んでおり、戻ることはできなかった。
 デンマークで避難民の申請をすると、手続き終了までは他国へのビザ申請はできないという。日本は政府専用機での受け入れ以降、保証人は必要なくなったが、オレナさんらは今も手続きできないままでいる。

◆「手探りの支援」で不具合も

 今はコペンハーゲン近郊の町で生活する。支援を受け、ヒロ君も幼稚園に通い、周囲となじんできたが、オレナさんはキーウに残る家族が心配でならない。
 オレナさんは言う。「日本が避難民を受け入れると聞いた時はうれしかった。でも戦争中にもかかわらず、なぜすぐ助けてくれなかったのか。怒りといらだちを感じる。このことは日本国籍を持つ息子の目に、将来どう映るのだろうか」
 難民支援に取り組むNPO法人「難民を助ける会」(東京)の古川千晶事務局長は「今までの閉鎖的な日本の対応を考えると、ウクライナ避難民の受け入れは一歩前進。ただ制度設計やサポート体制がないままの手探りの支援のため、時間がかかり対応に不具合が出ている」と指摘する。

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