1人部屋に隔離、ホルモン投与認められず 入管に収容されたLGBTの処遇改善を

2020年3月3日 12時03分

パトさんが収容されている東京出入国在留管理局=東京都港区で

 出入国在留管理庁の施設に収容中のフィリピン人のトランスジェンダー女性(27)が、7カ月にわたり、ホルモン投与が認められないとして、処遇の改善を求めている。性的少数者(LGBT)ゆえに他の収容者と隔離され、自由時間も減らされているという。専門家からも「個人の尊厳が奪われている状況」とし、収容を解くよう求める声が上がる。 (安藤恭子)

◆自由時間2時間だけ「私だけ不公平」

 「ずっと部屋に一人。孤独でうつになりそう。何もする気になれず、部屋の壁に頭を打ちつけている」。東京出入国在留管理局(東京都港区)七階の面会室。透明のアクリル板越しにパトさん(仮名)が訴えた。
 本人や支援者によると、パトさんは男性として生まれ、四歳で自分を女性と認識。日本にいる父やきょうだいを頼って二十一歳で来日した。都内の弁当店で働いていたが、オーバーステイが発覚し、昨年七月に東京入管に収容された。
 施設は男女別のエリアに分かれ、通常は複数人が同室で生活するが、パトさんは一人部屋。室外に出て運動やシャワー、電話などができる自由時間は一日七時間あるのに、パトさんは他の収容者と接触しないよう二時間に限られ、「私だけ不公平」と主張する。

◆ホルモン投与中断で更年期の症状も

 二十歳から毎日服用していたホルモン剤も入管に認められず、「胸が小さくなった」と不安を覚える。医師から痔ろうの手術が必要とされたほか、逆流性食道炎や胃炎と診断を受けた。
 性同一性障害に詳しい針間克己医師は「トランスジェンダー女性がホルモン投与を急にやめると、疲労や無気力、骨粗しょう症など、更年期障害のような症状が現れる。体形が変わる精神的な不安も大きい。放置すれば悪化する可能性があり、医学的見地からは早期の投与再開が望ましい」と述べる。
 カトリックの影響が強いフィリピンでは、同性婚や性別変更が認められない。「頼れる家族は日本にしかいない。パートナーシップ制度もある日本で暮らしたい」とパトさんは願う。

◆同性愛で迫害、母国を逃れる人は少なくない

 同性愛者であることを公表し、LGBT収容者の支援を続けてきた石川大我参院議員は「パトさんへの著しい人権制限は問題。配慮できないのなら身柄の拘束は解くべきだ」と話す。世界には同性愛が死刑とされる国もある。「母国で迫害され、日本に逃れて来たLGBTの収容者も相当数いるだろう」と指摘する。
 ペルー人のトランスジェンダー女性ナオミさん(47)=仮名=もその一人だ。先月、都内の集会に参加し「私はペルーで石を投げられ、友人は殴られて死んだ」と訴えた。
 入管ではパトさんとは異なり、他の男性と同室に収容された。「おかま」と差別的な言葉をかけられ、体も触られた。現在は仮放免中。石川氏は「収容が長引けば、他の収容者の性的対象にもされかねなかった」と懸念する。

◆煮え切らぬ入管 「個人の尊厳を奪う」

 入管庁によると、LGBT収容者への配慮を定めた統一の指針はない。警備課の石塚平警備係長は「各施設で配慮していると認識している。部屋割りなどは本人の身体的特徴や意向、他の収容者への影響、秩序の維持など総合的な判断で決める。ホルモン投与については緊急性がある場合、医師の受診を検討することもある」と煮え切らない。
 「LGBT支援法律家ネットワーク有志」の加藤慶二弁護士は「トランスジェンダー女性にとってホルモン投与は本来の性として生きるため、極めて重要なもの。投与させない状況は女性として生きる個人としての尊厳を奪う。一人部屋への隔離や自由時間の制限を見ても、この状況が長期化することは人権上望ましくない。仮放免を認めるべく、検討すべきではないか」と語った。
 (2月25日朝刊特報面に掲載)

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