<わたしの転機>収穫の喜びを「起業」 40代の半ばで脱サラ ブルーベリー農園主

2022年5月11日 08時28分

手塩にかけて育てたブルーベリーの花と畔柳茂樹さん=愛知県岡崎市のブルーベリーファームおかざきで

 愛知県岡崎市でブルーベリー狩り園「ブルーベリーファームおかざき」を営む畔柳(くろやなぎ)茂樹さん(59)は、45歳で自動車部品大手のデンソー(同県刈谷市)を辞め、全く経験のなかった農業を始めた。農園は年60日の営業で約1万人を呼び込む観光スポットに。農園開設のセミナーも開き、起業を志す人を応援している。 (佐橋大)
 デンソーでは、ボタン操作でドアの解錠などができるスマートキーの普及などを担当していました。四十歳で課長になると、事業の目標設定とフォローで多忙を極めて心のバランスを崩し、会社員生活に疑問を持つようになりました。
 組織に縛られず、好きなことを仕事にして、自分らしく輝きたい−。子どもの頃から動物や植物を育てることが好きでした。実家に農地があったので農業をやろうと決め、二〇〇七年に早期退職制度を使って脱サラしました。
 目指したのは、これまでにない斬新な農業。初心者でも育てやすく、収益性の高い作物を調べて、各地の生産者を訪ね歩きました。その中で、京都の農家で養液栽培されたブルーベリーを口にして感動し、これでいこうと決断。屋外で育てるので自然を感じて仕事ができ、イチゴなどに比べれば手間もかからないのも魅力でした。
 本なども読んで栽培方法を勉強し、田んぼとして使っていた実家の農地七千五百平方メートルのうち五千平方メートルで五十種類、計約千百本のブルーベリーの栽培を始めました。原産地・米国の環境に近づけるため鉢植えで土の酸度を調整。当時、日本にブルーベリー専業農家はいなかったので、自分が第一人者になろうと燃えました。
 ビジネスモデルを考えるときには、デンソー時代の経験が生きました。労働時間を計算すると、収穫と出荷が圧倒的に多い。この部分を「体験」としてお客さんに買ってもらえば、人件費を削減できて収益を得られる。一石二鳥です。
 残りの農地に飲食用のログハウスなどを建て、〇八年にブルーベリー狩り園をオープンしました。評判は上々。デンソーでの仕事は自動車メーカー相手だったので、消費者を直接喜ばせる仕事ができてうれしい。コロナ下でもあまり客は減らず、年収も会社員時代より多く得られています。今年も六月四日から八月まで開く予定です。
 観光農園の開設、経営のセミナーも一二年から毎年開いています。延べ約千六百人が参加し、受講生によって全国で約百カ所のブルーベリー狩り園が誕生しました。これからも起業しようか悩んでいる人を後押ししていきたいです。

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