賛否渦巻くコンビニトイレの公共化 2月に始めた神奈川県大和市の出足は…

2022年5月12日 09時00分
 神奈川県大和市がコンビニトイレの公共化に協力する店を募っているとの記事を3月に報じたところ、読者から賛否両論が寄せられた。市で公共化に応じた店舗は開始2カ月半で11店と、出足好調とはいかない様子。あらためてコンビニトイレの公共化の是非を考えてみた。(特別報道部・宮畑譲)

大和市の「公共トイレ協力店」を示すステッカーが張られたコンビニ=神奈川県大和市で

◆「掃除は心身共に大変」「高齢者には大変助かる」

 「数店舗で勤務したが、どこも人員がギリギリ、もしくは仕事量に対し店員の数が不足していた。多くの人が使うトイレの掃除は心身共に大変だった」
 そんな悲痛な投書をしてきたのは、群馬県高崎市の元コンビニ店員。「トイレの維持管理の費用や人の存在を無視しないでほしいと思う」と結んだ。
 一方で、「公衆トイレを造るスペースが確保できないための対策。88歳の私には、コンビニのトイレが使えることは大変助かる」と肯定的な意見の読者もいた。

◆2カ月半で11店舗「本年度中に50店舗目指す」

 2月1日にコンビニトイレの公共化に協力する店を募集した大和市は、本年度中に50店舗まで増やす予定。募集直後の1カ月間には7店舗が応じたが、その後の1カ月半は4店舗にとどまる。
 市の担当者は「市にも賛否両方のご意見があった。(協力店が増えるペースが)遅いとは思っていない。他の自治体からは『やりたい。教えてほしい』という問い合わせもある。今後、コンビニの運営会社とも話し合って進めていきたい」と話す。
 応募に二の足を踏む店の理由として考えられるのは、多くの人が使うことでトイレの維持、管理が大変になると感じているからのようだ。
 15年以上、コンビニトイレの研究を続ける名古屋工業大の小松義典准教授(建築学)が名古屋市内のコンビニオーナーに聞き取りを行ったところ、トイレを貸すことに6割が肯定的だった一方、4割は「利用者のマナーが悪い」などの理由で否定的だったという。
 小松さんは災害時の支援などを念頭に、コンビニトイレの必要性は高いとの認識。一方で、年々、清潔さや使い勝手など求められるレベルが上がっているとみる。「場所代、水道代、人件費を考えれば、相当な経費がかかっている。何らかの助成を考えないと、維持していくことは難しいだろう」
 大和市は協力した店に1年でトイレットペーパー200ロールを支給するが、金銭的な補助は予定していない。

◆売り上げは伸びず余裕なし やはり金銭的補助は必要か

 東京都千代田区は2019~21年、東京五輪に合わせ、トイレの開放に協力したコンビニなど一事業者につき3万円を補助した。「トイレットペーパーなど消耗品を区で負担するという認識。金額に特に基準はない」という。
 10年度からコンビニなどで公共トイレ化を進める東京都町田市では、約80の店や寺社が協力しているが、特に補助金などは出していない。担当者は「事業を始めた時期が東日本大震災と重なった。災害時に協力することを意識してもらえたのかもしれない」と補助なしでも協力が進んだ理由を推測する。
 コンビニの問題に詳しい武蔵大の土屋直樹教授(人事管理)は「近年、一店舗当たりの売り上げは伸びておらず、コンビニに余裕はない。いろんなサービスを増やしてきたが、人も増やせず、負担は限界に近づいている。新たに公共サービスを担わせるのなら、金銭的な補助を出す必要がある」と指摘する。
 確かに便利なコンビニトイレ。ただ、公共トイレと位置付けるなら、今後は税金など利用側の負担は避けられないのかもしれない。
※5月2日付の東京新聞特報面に掲載

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