補聴器、明るく楽しく 着せ替えパーツで自分好みに

2020年3月2日 02時00分

装飾された補聴器をつける松島亜希さん=いずれも東京都福生市で

 「補聴器への偏見をなくしたい」という難聴の松島亜希さん(35)=大阪府=の思いに、東京の補聴器店主の北村美恵子さん(44)が応え、補聴器を自分好みのデザインに変身させる着せ替えパーツを共同開発した。松島さんは「目が悪くなったら眼鏡をかけるように、補聴器を使うことが当たり前の社会にしたい」と願う。 (加藤健太)
 着せ替えパーツは「補聴器デコチップ」と名付けられ、ネイルチップ(つけ爪)のように、気分や場面に合わせて補聴器の本体に貼り付けて楽しむ。南国風やイチゴ柄、和柄など豊富なデザインがそろう。
 補聴器をきれいにデコレーションする人は増え始めているが、シールやラメで本体を飾るため、自由にデザインを変えられないのが難点だった。
 発案した松島さんは「時と場合で付け替えられるので楽になった」と胸を張る。以前は、通夜などの急用の際に急いでシールをはがし、帰宅後に貼り直す作業を繰り返していた。
 大学時代、ある男児が松島さんの補聴器を指さして「それ何」と聞くと、すぐさま親が「そんなこと聞かないの」とさえぎった。松島さんは「関わってはいけない人だと言われている気がした。対話しないと理解につながらない」と、見せる補聴器の開発をスタート。店頭に並ぶネイルチップをヒントに「着せ替え」の手法を思い付いた。

補聴器を装飾する「補聴器デコチップ」

 開発の過程で、東京都福生市で西部補聴器の店長を務める北村さんと知り合った。北村さんも「補聴器を明るく楽しいものに」と、カラフルな補聴器を会員制交流サイト(SNS)で発信していた。
 「マイナスイメージを変えたい」という思いが重なり、二人は昨年四月に製作を開始。シリコーンで補聴器の型を取ってチップを作り、ネイルアートの塗料で表面を装飾して完成させた。
 昨年七月に発売後、三十枚が売れた。愛用する東京都小金井市の伊藤美穂子さん(49)は「補聴器をつけていることへの恥ずかしさがなくなった。『アクセサリーみたい』と褒めてくれる人もいて、気持ちが前向きになれた」と打ち明ける。
 注文を受けてから、主に認定補聴器技能者の北村さんが手作業で仕上げている。一枚一万一千円から。普及に意欲を燃やす二人は「補聴器は特別なものではなく、当たり前のものだという意識を広めていきたい」と語る。

「補聴器デコチップ」を製作する松島さん(左)と北村美恵子さん

◆価格・見た目 普及へ課題

 日本補聴器工業会によると、二〇一九年の出荷台数は約六十一万台。高齢化などを背景に、三十年前と比べて倍増した。だが、難聴者のうち補聴器を使っている人の割合は14・4%にとどまり、欧米諸国の30~40%台と比べてかなり低い。
 片耳で十五万~二十万円という値段の高さや見た目が課題。八嶋隆事務局長は「日本では九割の人が自費で購入している。欧米のような手厚い公的支援を国に求めていきたい」と話す。
 各メーカーは「目立ちにくい」「おしゃれ」を重視する傾向にある。耳の後ろにすっぽりと隠れてしまう超小型や、イヤホンと見間違うほどデザインが洗練された商品が店頭に並ぶ。

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