独立60年迎えるルワンダ ジェノサイド乗り越え、国会議員の女性比率は61%で世界トップ そのわけは…

2022年5月22日 06時00分

スーダンでは、WFPのプログラム政策官として活躍している並木さん=本人提供

 アフリカ東部の国ルワンダは2022年7月、ベルギーからの独立60周年を迎えます。国民の7割が女性となり、社会をけん引する中、多くの日本人女性も現地で活躍しています。その一人、並木愛さんは2018年8月から21年10月まで3年間、ルワンダで国連世界食糧計画(WFP)のスタッフとして難民支援などの活動に取り組みました。在日ルワンダ大使館と在ルワンダ日本大使館の協力を得て、並木さんにオンラインでインタビューしました。(サンデー編集部・安藤美由紀)

◆バネのような強靭性、和やかで前向き

Q 並木さんはアフリカではジンバブエ、ルワンダ、スーダンと3カ国で活動していますが、ルワンダはどんな国でしょうか。
 一言でいうと人々がたくましい国だと思います。強靱きょうじん性がある。曲がっても戻る力があるバネのように。ルワンダは大虐殺の歴史があり、心の傷を抱えている人がいっぱいいます。私の同僚もほぼ全員が虐殺を経験し、家族を亡くしたり、友達を亡くしたり、自分も他国で難民生活を強いられた人たちでした。それなのにとても和やかで前向きな人が多くて、話しているとなんだか自分の悩みなんてちっぽけだったな、もっと頑張ってみようと思わせる強さを人々は持っています。
 またルワンダは街にごみが落ちていないため、とにかくきれい。治安がよくて女性や子どもでも夜、外を歩ける。3つ目に人がすごく穏やかで優しい。この3つの魅力だけで多くの外国人を引きつけてやまない国です。

◆「自分たちが動かないと前に進まない」と自覚

Q 支援していて頼もしかったところは。
 特に今のスーダンの状況と比較して思うのは、政府や市民団体がジェンダー問題に積極的に取り組んでいる点です。女性は開発においても大きな役割を果たすと知っていて、自分たちが動かないと国の発展が進まない、自ら前に進もうという力が大きいです。現在、61%の国会議員が女性でこれは世界で最も高い割合です。田舎の難民キャンプだったり、農村に行くとジェンダー格差はあります。ですが、国の取り組みとしてジェンダー政策が重要視されているのは大きい。
Q 開発に女性が重要というのは具体的にどういうことでしょうか。
 私たちの活動である食糧支援の分野では、食料の受け取り手をなるべく女性にしましょう、と言っています。なぜかというとリサーチの結果、男性に食べ物や現金を渡した場合、家族の中で平等に分配し、栄養の向上につながっているケースが女性に比べて少ないからです。
 これはルワンダに限らず、世界中で同じ。女性は現金をお酒やたばこに使わず、食料を買おうとします。また、妊娠中及び授乳中の母親と子どもに対して栄養支援をすると、1ドル分の支援、投資をしたときにその人や子どもに将来16ドルのリターン、本人の収入に反映されるというリサーチがあります(2015年世界栄養報告)。

ルワンダの難民キャンプで食料支援に取り組む並木さん=本人提供

◆コロナ禍の支援カット…受け止め、乗り越える

Q コロナ禍で状況は変化しましたか。
 はい。1つは学校給食事業や難民向けの食料配布が数カ月、止まりました。ルワンダは学校閉鎖や移動規制など非常に強い蔓延防止策をとったため、慢性栄養失調の率が高まりました。食糧支援というのは、人が集まっての支援になるのでとても難しい。当時はマスクやアルコールジェルもなく、お酢を使って消毒していました。私たちがパンデミックを起こすわけにはいきません。さまざまな障害を乗り越えてどうしたらお腹が空いている人たちを助けられるか、職員同士で毎日、膝をつき合わせて考えました。
 もう一つは2021年初頭の難民への支援額カットです。支援額を40%までに減らさなくてはなりませんでした。その背景にはコロナ禍に加え、南スーダンやイエメンなどルワンダ以外の緊急支援のニーズが増え、日本をはじめ世界中の支援者がルワンダから退いてしまったことがあります。無念でしたが、その事実を正直に伝えました。申し訳ないけれども、これで家計のやりくりをしてください、と。
 その言葉を難民キャンプのメガホンを通して伝えたとき、人々は厳しい表情でうなずき、暴動も起きませんでした。受け入れるしかない、それぐらいショックなことだったのだ、と理解しました。一方で、近隣国であるコンゴからの難民たちは、これでは暮らしていけないから祖国に返して欲しいと国連難民高等弁務官に嘆願書を出したとも聞いています。それぐらい厳しい状況です。

◆男性が男性に「ジェンダー平等」でトレーニング

Q 日本人や日本政府が学べることは。
 1つはジェンダー平等に対しての意識の高さです。ルワンダではほかのアフリカ諸国に比べて女性の起業など自らイニシアティブを取りやすい環境があり、男性が男性に対してジェンダー平等に関するトレーニングを行う市民団体が活躍しています。私も女性としてたくさんのことを学びました。後は国の政策関してリーダーが即時に決断をして実行に移すことでしょうか。
Q 日本の若い人たちにメッセージを。
 足を動かしていただきたい。コロナ禍で難しいとは思いますが、海外渡航ができるようになったら、勇気がいるかもしれないし、親の反対もあるかもしれないけど、とりあえず一歩を踏み出してきてほしい。現地で私たちみたいな日本人がいてものすごく応援したいし、サポートしたい気持ちはある。自分の目で現実をみて、そこからいろんな気づきを得ることは、彩り豊かで1つでも多くの選択肢のある人生を歩むきっかけになるのではないかと思います。

おすすめ情報