住宅価格の上昇も懸念…太陽光パネルの設置義務化に動き出した東京都の現状と課題とは

2022年5月12日 06時00分
 東京都が全国に先駆けて、新築一戸建て住宅に太陽光パネルの設置などを義務付ける制度改正に動きだした。ただ、都の有識者検討会が11日にまとめた答申案には、設備費の上乗せによる住宅価格上昇を懸念する声も。脱炭素化を加速できるかは、税による補助のあり方など費用対効果を見定める議論が避けられない。(鷲野史彦)

◆小池知事「家庭の省エネこそ必要」

 「脱炭素化には、資源エネルギーの大消費地である東京都の取り組みが極めて重要だ」。11日の有識者検討会で、都担当者は、太陽光パネル設置を義務化する意義をこう語った。
 都は地球温暖化につながる温室効果ガスの排出量を2030年に00年比で半減する計画を立てるが、19年時点で0.2%減にとどまり、達成は遠い。
 原因の一つが、家庭からの二酸化炭素(CO2)の排出量の増加だ。東京では世帯数が増え、家電の省エネ化にもかかわらず、家庭の19年の排出量は、00年より300万トン以上増えた。
 住宅への太陽光パネル設置について、国も昨年設置した有識者検討会で検討したが「(初期費用の増加で)住宅取得に影響が出る」などの声が浮上し、義務化は見送った。しかし、小池百合子知事は「家庭内の省エネこそ進める必要がある」と強調。昨年9月に義務化の検討着手を表明した。

◆初期費用に維持費も必要

 費用負担の問題は、都の検討会でも指摘された。「規制的措置を講じるなら、建築主や住宅購入者に、都が責任を持ってサポートする体制・措置が必要」。住宅メーカーなどでつくる「住宅生産団体連合会」(住団連)の担当者は1月、太陽光パネル設置の必要性に理解を示しつつ、行政の補助が不可欠と訴えた。
 都や住団連によると、一般的な一戸建ての太陽光パネル設置費は、出力4キロワットで100万~120万円。費用は発電分の自家消費や売電により10年程度で回収できるものの、これまでのように購入者が設置を選択できず、いや応なく初期負担が増す。さらに維持費として、購入者には20年間で35万円ほどがかかる。

◆補助金はどこまでふくらむのか

 都は22年度、省エネや温暖化対策の予算を大幅に増やした。新築住宅への省エネ・断熱性能の整備や太陽光パネルの設置を進めるため108億円を計上。最高で一般家庭の太陽光パネル設置費の3分の1相当の36万円(3キロワット分)を補助する。災害対策名目でも、太陽光パネル設置を促す。
 これら補助の対象は年間約1万3000件分だが、太陽光パネルが義務化されると、対象は倍近くの約2万3000件に膨らむ。「義務化するなら理想は全戸補助」(住団連の担当者)との声もあり、仮に現行の補助を適用すれば、単純計算で36億円が追加で必要だ。
 都の有識者検討会座長の田辺新一早稲田大建築学科教授は、「制度普及のため、最初は補助金で購入者の負担を減らす必要はあるが、税金が使われるのだから、出し続けるのは適切ではない」と指摘する。
 太陽光パネル設置には、建物購入者が設置代を負担する手法だけでなく、発電事業者に屋根を貸し、設置費用を事業者側が負担する「屋根貸し」もある。「住宅メーカーがこういう事業者と協力し、義務を果たすやり方もある」と、補助に頼らない制度を提案する。

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