ハルウララ 再脚光 「ウマ娘」ブームが一役

2022年5月12日 07時07分

千葉県御宿町のマーサファームで余生を送るハルウララ

 二十年ほど前、負けても負けてもひたむきに走り続けて一大ブームを巻き起こした元競走馬、ハルウララの人気が再燃している。余生を過ごす千葉県御宿町の牧場に、当時を知らないにもかかわらず遠方から見学に訪れる若者が増加。背景を探ると、名馬を萌(も)えキャラに擬人化したスマートフォンゲームの流行が魅力の再発掘に一役買っていた。

現役時代惜しくも2着=2004年、高知競馬場で

 ハルウララは高知競馬で一九九八年デビューの牝馬(ひんば)。負ければ負けるほど人気が高まり「負け組の星」と話題を呼んだ。百十三連敗を数え、二〇〇六年に生涯未勝利で引退。牧場を転々とした後、一二年十二月から房総半島東部にある御宿町の「マーサファーム」に預けられた。今年二月で二十六歳となり、人間なら八十歳近くに相当するが、今でも元気いっぱいだ。

「ウマ娘」のハルウララのマスコット

 「一年ほど前からウララに興味を持つ若者が増えてきた。スマホゲームをきっかけに昔のブームを知り、実馬に会いに来た人が多い」。そう話すのは、同牧場でハルウララなど預託馬九頭を世話する宮原優子さん(39)。
 ゲームとは競馬育成シミュレーション「ウマ娘 プリティーダービー」。今年四月にダウンロード数千四百万回を突破、ゲームアプリで最上位人気を誇り、アニメも好評だ。昭和末期−平成の競馬ブームを生んだオグリキャップ、歌手北島三郎さんが馬主だったキタサンブラックなどGⅠ競走の勝利馬と並び、ハルウララもキャラクター化された。

ファンからもらったニンジンをもぐもぐ

◆「負けても輝く」ささる若者

ハルウララのキャラクター ©Cygames,Inc.

 「ひかれるところは負けても負けても走り続けたこと」。四月中旬、東京都港区から牧場を訪ねた私立大学一年生の男性(18)もゲームを通じて同馬を知った。「高校時代は陸上部で全国大会を目指したが、上には上がいて挫折を味わった。でも、ハルウララを見て勝つだけが全てじゃないと思え、不安な新生活に勇気をもらった」。自身と馬を重ね合わせて語った。
 品川区の会社員峯下大輝さん(35)は「ウマ娘は競走馬の逸話や史実が盛り込まれ、そこから実際の競馬ファンになった。ウララの負けても輝く姿はサラリーマンにも共感できる」。新型コロナウイルス禍で社会の価値観が大きく変容した今、負け組の星への共感はむしろ高まってさえいるようだ。

ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」 ©Cygames,Inc.

 ハルウララは現在、宮原さんが代表を務める「春うららの会」に賛同する全国会員約五十人の支援費で余生を送る。宮原さんは「ウマ娘ではかわいく描かれているが、実馬はニンジンがなくなるとバシバシ壁を蹴って怒る。気が強いけどさみしがり屋な子」と笑う。「世の中で勝ち続ける人はごくわずか。周囲の喧騒(けんそう)を気にしないウララのマイペースな様子に、見る人は何かを感じるのでは」。牧場は事前予約の人数限定で見学できる。
 文・中谷秀樹/写真・田中健
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