<社説>知床観光船事故 不適格業者一掃せねば

2022年5月12日 07時44分
 北海道・知床沖での観光船沈没事故を受け、国土交通省が再発防止に向けた有識者検討委員会の初会合を開いた。観光船会社のずさんな安全管理に加え、国の管理の甘さも事故の一因に指摘される。安全対策を徹底し、不適格業者は一掃すべきである。
 海事法制専門家らで構成する検討委は安全管理が不十分な事業者の排除、実効性のある船舶検査や安全規則の確立などを議論する。法整備も視野に、七月までに中間報告をまとめるという。
 事故を起こした観光船会社は、安全意識を著しく欠いていたことが明らかになっている。
 難所である海域で漁業者らが引き返す荒天時に、経験の浅い船長が陸との連絡手段もおぼつかない中、出航した。同様に海の経験が乏しい社長も同意していた。
 当日の天候は運航基準に違反していたが、運航の可否を判断する「運航管理者」である社長は、その基準内容すら知らなかった。
 問題はこうした不適格な業者が営業していた点にある。観光船などの旅客不定期航路事業は国の許可事業であり、事故は国の管理の甘さをも露呈させたことになる。
 例えば、事業に不可欠な運航管理者になるには法的な要件を満たす必要がある。社長は「三年以上の実務経験がある」と実態とは程遠い内容を届け出ていたが、北海道運輸局はこれを認めていた。
 事故に遭った船長は国の代行機関、日本小型船舶検査機構(JCI)の検査で連絡手段を携帯電話に変更すると申し出た。航行区域の大半は通信圏外だったが、JCIは申し出を受け入れた。
 管理者と事業者とのなれ合いではないのか。国は猛省すべきだ。
 検討委は今後、複数の重大事故の後に安全規制が強化された貸し切りバス業界の例などを参考に、規則の厳格化を議論するという。
 貸し切りバスでは抜き打ちの監査導入が効果を上げた。旅客船にも適用すべきで、そのための人員や予算の確保を急ぐ必要もある。
 一方、国は鉄道や航空機などの事故はすべて公表しているが、旅客船では行政指導案件は公表対象外だった。今後は原則、公表とすべきだ。船長の資格についても見直しが必要だろう。
 残念なのは、こうした安全論議が常に大事故の後追いであることだ。国は意識を変え、事故の予防にこそ力を注いでほしい。

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