台風被害の旅館 本格再開 小説舞台の群馬・霧積温泉 県道復旧 常連「待ちわびた」

2020年2月29日 16時00分

旅館「金湯館」の営業を本格再開した社長の佐藤淳さん(左)と妻の知美さん(右)=10日、群馬県安中市で

 昨年十月の台風19号による県道崩落で苦境に立たされていた群馬県安中市の老舗旅館「金湯館(きんとうかん)」が二月、県道復旧を受け、営業を本格再開した。作家森村誠一の小説「人間の証明」の舞台となった霧積(きりづみ)温泉に残る唯一の旅館の再開に、常連客らからは「待ちわびていた」との声が上がった。
 金湯館は一八八四年創業。台風で旅館につながる県道が崩落し、車両の立ち入りが不可能に。社長の佐藤淳さん(49)は「設備に支障はなかったが、県道再開のめどが立たず、廃業も頭をよぎった」と目を伏せた。
 収入が途絶える不安もあり、転職も検討したが、「伝統ある旅館を自分の代で途絶えさせたくない」と決意を固め、徒歩で来られる登山客らの受け入れを始めた。
 会員制交流サイト(SNS)に徒歩ルートや周辺の写真を掲載。ルート上にある林道の倒木を撤去するなどした結果、約三十人が約三時間かけて訪ねて来てくれたという。
 県道寸断中のキャンセルは延べ七百人分に上ったが、SNSには「頑張って続けて」「再開したら行きます」といった言葉が寄せられ、妻の知美さん(49)は「励まされた」と振り返る。
 本格再開直後に訪れた常連客の飲食業鈴木勝彦さん(52)=千葉県松戸市=は「湯の魅力だけでなく家族経営の温かみが残る旅館は貴重だ」とほほ笑んだ。

昨年の台風19号で旅館につながる県道が崩落。車両の通行が不可能になった=2019年10月20日(提供写真)

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