AI駆使し汎用ワクチン開発へ NECが新型コロナ対策で着手

2022年5月13日 06時00分
 人工知能(AI)を駆使し、新型コロナや重症急性呼吸器症候群(SARS)など、100種類以上のコロナウイルスに対応する「汎用ワクチン」の開発にNECが着手した。米カリフォルニア工科大なども開発を目指しているものだ。ウイルスを特定して製造するワクチンより効果は低いとみられるが、汎用ワクチンを流行初期に使うことができれば、死亡率の低下が期待できる。(佐藤航)

◆100種類以上のウイルス遺伝子解析

 開発する汎用ワクチンは過去にパンデミック(世界的大流行)を起こしたり、今後、起こす恐れのある「ベータコロナウイルス属」100種類以上を対象とする。人への感染が確認されているベータコロナウイルスは新型コロナとSARS、中東呼吸器症候群(MERS)、風邪の原因とされる2種類と少数だが、ほかに動物から検出済みで人に感染する可能性のあるものが多数ある。
 メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの技術で開発する予定。まず、AIが100種類以上のウイルスの遺伝子データを解析し、共通する特徴の中から人の免疫反応を呼び起こすタンパク質を探す。そのタンパク質を人の体内で製造する遺伝情報の入ったワクチンを接種すれば、100種類以上の全ウイルスに対する免疫が得られるという仕組みだ。

◆専用ワクチンできる前に用意を

 新型コロナは2019年末に中国で初めて確認され、米ファイザーが約1年でmRNAワクチンの実用化にこぎ着けた。数年以上とされる開発期間を劇的に短縮したが、米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、20年末までの1年間で、世界で約180万人が亡くなった。
 東京大の石井健教授(ワクチン科学)は汎用ワクチンについて、「(特定のウイルス)専用で作るワクチンより効果は低いかもしれない」と話す。その上で、「専用ワクチンができる前に、これを打てば何とか死亡率が下がるという汎用ワクチンを事前に用意しておくことは重要だ」と強調した。

◆2年以内にマウス試験へ

 解析が必要な遺伝子データは、新型コロナだけで650万以上ある。100種類以上のウイルスともなると、そのデータ量は膨大で、AIだからこそ解析が可能になった。NECは19年に買収したノルウェーのバイオベンチャー企業が持つ免疫分野の強みと自社のAIを組み合わせた。
 解析を終えても、100種類以上のウイルスに共通する人の免疫を誘導するタンパク質が見つからない可能性はもちろんある。見つかったとしても、ワクチン効果の低減を防ぐため、変異しやすいタンパク質を除いたり、人種によって異なる免疫反応を考慮したりする必要がある。
 それでも、NECの北村哲・AI創薬統括部長は、2000年以降にSARS、MERS、新型コロナの流行が起きたことから、「今後も大流行が起きる頻度は変わらない」とし、汎用ワクチンを準備する意義を強調する。1年半でデータ解析を終え、2年以内にマウスを使った免疫反応試験まで進む計画だ。

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