「世界一高い薬」来月承認 脊髄性筋萎縮症の治療薬 米国では2億3400万円

2020年2月27日 02時00分
 厚生労働省の専門部会は二十六日、脊髄性筋萎縮症(SMA)の遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」の製造販売を了承した。三月中に正式承認され、五月にも公的医療保険が適用される見通し。米国では既に承認され、二百十二万五千ドル(約二億三千四百万円)の価格が付いた。今後、中央社会保険医療協議会で保険適用を巡る議論が行われるが、国内でも薬価が高額になる可能性がある。
 SMAは筋肉をコントロールする神経の働きが弱まり、徐々に筋力低下や筋萎縮が起きる希少疾患。特定の遺伝子の機能欠損が原因で、発症時期や病状によって四つの型に分かれる。生後半年までに発症する「I型」が最も重篤とされ、二歳までに患者の九割が死亡するか、人工呼吸器を生涯装着する必要がある。
 ゾルゲンスマは、製薬大手ノバルティスファーマが二〇一八年十一月に申請した。正常な遺伝子を静脈内に投与し、遺伝子の機能欠損を補い、神経や筋肉の機能を高める効果がある。一回の投与で治療は終わり、日本人が参加した臨床試験でも有効性が確認された。
 二歳未満の患者が対象で、ノバルティスは年十五~二十人が使うと見込む。

◆保険財政維持に危機感

 「世界一高額な薬」と呼ばれるゾルゲンスマは高い治療効果に期待が集まる一方、専門家からは医療保険財政への影響を懸念する声も上がる。
 「既存薬と違い一回の投与で終わる。より良い治療の提供につながるのではないか」。厚生労働省によると、非公開で行われた二十六日の専門部会で、委員の一人はそう期待を語った。患者や家族の間では以前から待望論があったという。
 焦点となるのは薬価だ。日本の公的医療には患者の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」などがあり患者負担は低く抑えられる半面、大半が保険料や税金で賄われる。ゾルゲンスマは米国のベンチャー企業アベクシスが開発し、ノバルティスが二〇一八年に同社を約一兆円で買収した。
 名古屋大学の小島勢二名誉教授は「アベクシスの株を保有していた投資家は多額の資産を手にしたが、巨額な買収費用のせいで薬には驚くほどの値段が付いてしまった」と指摘する。
 医療技術の進歩で、近年は高額な新薬が次々と登場。昨年五月には白血病治療薬「キムリア」に、三千三百四十九万円の薬価が付いた。米国を中心に遺伝子治療薬の開発が進む中、小島さんは「このままでは保険財政は維持できなくなってしまう」と危機感を抱く。
 ゾルゲンスマには、対象患者が少なく、高額になりがちという希少疾病薬ならではの特徴もある。東京大学大学院薬学系研究科の五十嵐中客員准教授は「希少疾病薬の経済性は日本では考慮されてこなかったが、海外では考慮の対象となる」と話す。
 希少疾病薬の保険適用に当たり、海外では高額な薬を使いやすくするため、「費用に見合う治療効果が期待できるか」という費用対効果の基準を大幅に緩めるケースが多い。他にも治療後の患者の社会参加の可能性や、家族の介護負担軽減など経済性以外の要素を考慮し、最終判断するという。 (藤川大樹)

関連キーワード

PR情報

社会の最新ニュース

記事一覧