指先の器に夢満載 両国のミニチュア陶芸家 マンション自室にミニ工房 「愛好者増やしたい」

2022年5月13日 07時13分

ろくろを回し作品を制作するミニチュア陶芸作家の市川智章さん=いずれも墨田区で

 指先に乗るほど小さな急須に湯飲み、豆鉢。作者は「ミニチュア陶芸家」を名乗る墨田区の会社員市川智章(のりあき)さん(48)。今年一月に「一般社団法人日本ミニチュア陶芸協会」を立ち上げ、「両国をミニチュア陶芸の発祥の地に」と普及に奔走している。

豆鉢

 市川さんが家族と住むマンションの一室に、窯を備えた小さな工房「両国豆窯(まめがま)」はある。壁際の格子状の棚にずらりと並ぶ作品はどれも一〜数センチの極小サイズ。急須はミニチュアながらも本物同様に湯飲みに水を注ぐことができる。豆鉢にはミニ盆栽を植える。
 ミニチュア陶器の成形作業を見せてもらった。黒い粘土を電動ろくろにセットし、水を付けながら親指と人さし指で器用に伸ばしていく。三分足らずで瓶の形に。市川さんは「ぐしゃっとつぶれるなど、失敗もしょっちゅうですよ」と苦笑する。

アマビエ

 作る手順は普通サイズの陶器と同じだ。電動ろくろで形を作り、乾燥させる。七〇〇〜八〇〇度で素焼きをし、釉薬(ゆうやく)を掛ける。最後に一二三〇度で本焼きをする。作品の完成までは一週間ほどかかるという。
 制作には小型の電動ろくろ「ゆびろくろ」が欠かせない。「旅先でもろくろを使って陶芸ができれば」との思いから、工作用のモーターやコードを組み合わせて二〇一七年に自作。翌年に商標登録した。

酒器

 形を整えるためのコテも、空き缶のプルトップや百円ショップの木製マドラーを加工した手作り品。「道具を作ることは、器を作ることと同じくらい楽しい」
 甲府市生まれ。大学卒業後、オーストラリアの小学校で一年間、日本語教師として勤めた。やりたいことが見つからず、帰国後もデパートのアルバイトでお金をためては米国やカナダ、メキシコを放浪した。

豆鉢

 二十七歳で東京都内の出版編集プロダクションに就職。〇四年、陶芸好きだった亡き祖父の影響で、都内の陶芸教室の体験会に参加したことが転機になった。「粘土に触ると無心になれて、心地よかった。嫌なことも忘れられた」。自分の手でゼロから形作る作業も面白く、陶芸にのめり込んだ。
 一七年四月、自室に窯を入れた。同じ時期に、海外のインスタグラムで小さいサイズの陶芸作品を目にし、衝撃を受けた。「普通サイズだと、上手な人はごまんといる。ミニチュア陶芸なら自分の色が出せるのでは」と考え、挑戦することにした。ゆびろくろの自作にも成功し、ミニチュア陶芸家としての活動を本格化させた。

急須 ちゃんと水が注げる!

 現在、平日は会社員として働き、週末に制作をしたり、ミニチュア陶芸教室の講師を務めたりと多忙な日々を送る。制作方法を紹介するユーチューブも好評で、つぼ作りの動画の再生回数は千五百万回を超えた。
 日本ミニチュア陶芸協会の代表理事として、当面の目標は、陶芸教室を兼ねた協会の事務所を両国周辺に二年以内に開くこと。ミニチュア陶芸を障害者の就労支援にもつなげられないかと模索している。「文化としてのミニチュア陶芸というジャンルを確立し、愛好者を増やしたい」。小さな陶器には大きな夢がつまっている。
文・三宅千智/写真・稲岡悟
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