<歌舞伎評 矢内賢二>菊五郎の柔らかみ 名品 歌舞伎座「団菊祭五月大歌舞伎」

2022年5月13日 07時35分

「土蜘」の(左から)尾上菊之助、尾上丑之助、尾上菊五郎 ©松竹

 歌舞伎座は三年ぶりに団菊祭が復活。まず第一部は「祇園祭礼信仰記 金閣寺」から。中村雀右衛門の雪姫は夫直信への想(おも)いが終始行き届いているのがよく、花道の引っ込みにもしっとりとした色気が漂う。尾上松緑(しょうろく)の松永大膳は時折リアルな表情になるのがスケールを小さくして惜しいが、凄(すご)みもあって若々しい陽性の立敵(たてがたき)。片岡愛之助の此下東吉(このしたとうきち)、中村福助の慶寿院尼(けいじゅいんに)。第一部は他に季節感いっぱいの「あやめ浴衣」。
 第二部「土蜘(つちぐも)」は尾上菊之助の僧智籌(ちちゅう)実は土蜘の精が堅実で、いくつかの見得(みえ)もかっきりとして印象的。尾上菊五郎の源頼光は舞台いっぱいに広がる存在感とふっくらとした柔らかみ、明朗なせりふで名品。中村時蔵の侍女胡蝶(こちょう)に品格がある。中村梅枝の巫子(みこ)、尾上丑之助の太刀持(たちもち)、小川大晴(ひろはる)の石神で、音羽屋と萬屋(よろずや)の三代が共演するのも話題。中村又五郎の平井保昌。第二部は他に市川海老蔵の「暫(しばらく)」。中村錦之助の加茂次郎が水のしたたるような美しさで、片岡孝太郎の照葉(てるは)が明るくおおらか。
 第三部「弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)」は尾上右近の弁天小僧をはじめ次代を担うみずみずしい五人男が見もの。浜松屋の場の右近はイキがったヤンチャぶりがいいが、もう少し芝居っ気がほしい。坂東巳之助の南郷力丸はせりふがやや重いが、右近との剛柔のバランスがよく、二人の再演に期待。坂東彦三郎の日本駄右衛門(にっぽんだえもん)が音吐朗々(おんとろうろう)、市村橘太郎(きつたろう)の番頭が快演。稲瀬川勢揃(せいぞろ)いは花形ならではの華やかさ。中村隼人の忠信利平、中村米吉の赤星十三郎。第三部は他に「市原野のだんまり」。二十七日(十九日は休演)まで。 (歌舞伎研究家)

関連キーワード


おすすめ情報

伝統芸能の新着

記事一覧