前・現所有者証言食い違い 熱海土石流百条委で証人尋問 被災者置き去りで混迷

2022年5月13日 08時06分

土地の前・現所有者らへの証人尋問が行われた議場=熱海市議会議場で

 熱海市伊豆山(いずさん)の土石流災害の被害拡大の原因となったとされる盛り土があった土地の前・現所有者ら六人の証人尋問があった十二日の市議会調査特別委員会(百条委員会)では、盛り土造成の経緯や責任の所在などが明らかになるかが焦点だったが、前所有者は造成への主導的な関与を否定。現所有者は盛り土の存在を認識していなかったことを主張した。証言に食い違いが多く、被災者を置き去りにした状態で、真相解明は混迷を深めた。(山中正義、塚田真裕、中川紘希)
 両所有者が公の場で発言するのは災害後初めてで、証言内容が注目されていた。
 前所有者は「当社(神奈川県小田原市の不動産管理会社)は申請した会社で埋め立て行為者ではない」とし、造成したのはあくまで「別の業者」と従来の主張を繰り返した。
 土砂の搬入や工事への指示は、「私は土地を貸しているわけで、ああしたらいい、こうしたらいいと言えない立場と承知している」と説明。尋問中に前所有者らが土砂の搬入を協議しているとみられる音声が公開されても「相談があれば、アドバイスはする」などと明言を避けた。
 盛り土には届け出の三倍近くとみられる土砂が搬入されるなど不適切な造成が判明している。盛り土の安定性について、前所有者は「(土地を現所有者に売り渡してからの)十年の安定が証明している」と述べた。
 一方、二〇一一年二月に土地を取得した現所有者は「盛り土があったこと、何かしなければいけないということは認識していなかった」と証言した。
 土地の売買時に作られた重要事項説明書では、売り主の前所有者が、盛り土のひな壇崩壊部分の整形などを買い主に確約することなどが記載されている。しかし、現所有者は「直接契約したわけではなく、仲介人にすべて任せていたので細かいことは分からない」と述べた。
 百条委ではこれまでに、県や市の元職員や盛り土造成に関わったとされる工事関係者ら二十六人を参考人招致。この日の六人を含めて計七人を証人尋問した。
 稲村千尋委員長は証人尋問後、「何が真実かわからない」と困惑した様子で話した。今後は六月十四日に現所有者の関係者一人を証人尋問し、その後、報告書をまとめる方針。
 県と市の行政対応を巡っては、五月十三日に県の第三者委が最終報告を出す。

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