「ととのいの先」見据え サウナ大使としてブームけん引 タナカカツキさん(マンガ家)

2022年5月14日 13時10分

本人提供

 世は空前のサウナブーム。魅力を物語で分かりやすく紹介し、ドラマも話題になった『マンガ サ道』(講談社)の作者で、日本唯一の「サウナ大使」を務めるタナカカツキさん(55)は立役者の一人だ。人気の高まりに「混んでしまった面はあるが、ありがたい。どんどん施設が増え、サービスが充実してくるのは楽しい」と笑顔を見せる。
 「サウナで感じる快適さを朝起きた瞬間から味わいたい」。そんな思いから生活を見直し、最近は午前四時に起きて正午までに仕事を終わらせ、午後はサウナに行くなどの自由時間とし、午後九時には就寝−という流れが完成。「生活を完全にルーティン化すると、次にやることを考えたり、仕事をやろうと気持ちを奮い立たせたりする必要がなくなり、疲れない」。ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」で取材に応じてくれたのも仕事後の午後で、実にリラックスした様子が印象的だった。
 サウナにハマり始めたのは二〇〇八年。近所のスポーツジムで試しに入ってみると、水風呂後の休憩中に何とも言えない高揚感が得られた。今では「ととのう」として広く知られる感覚だが、当時はどうしたらこの状態になれるのかと自らの体で試行錯誤を続けた。
 一一年に出版したエッセー『サ道』(PARCO出版)が日本サウナ・スパ協会の目に留まり、一三年三月七日(サウナの日)にサウナ大使に任命される。まさにブームが巻き起こってきた時期だ。
 その要因に、設備の改善やサービスの充実など施設側の努力のほか、デスクワーク中心の仕事やスマホの普及といったライフスタイルの変化による脳疲労の増大を挙げる。「サウナはアウトドアのレジャーより敷居が低く、裸になって心地良い感覚の世界に浸れる。欧米でも都市部でブームが起きていて、現代にフィットしたのだろう」とみる。
 多くのサウナー(サウナ愛好家)との交流も深まり、人気ブロガーの濡れ頭巾ちゃんが使っていた「整う」という表現に引かれる。二人で話し合い、「調う」など複数の意味があるとしてひらがなの「ととのう」とし、一五年に連載が始まった『マンガ サ道』で採用。サウナ室→水風呂→休憩のサイクルや、「ととのった」時の表情を可視化したことは、ブームをけん引し、一九年のドラマ化がさらに火を付けた。
 今年三月七日にはこれまでのサウナとの関わりをまとめた最新エッセー『サ道 ととのいの果てに』(PARCO出版)を出版。十二月には東京・渋谷に自身がプロデュースする「渋谷SAUNAS(サウナス)」がオープンする。「お湯の浴槽はなく、頭までもぐれる水風呂だけ。サウナに振り切り、食事にもこだわって、いるだけで心と体がととのう仕掛けを施す」。ほかにも日本各地で施設をプロデュースする予定だといい、サウナーの記者としては楽しみでならない。
 さらに、タオルを振り回してサウナ室内の蒸気を攪拌(かくはん)して客に送る「熱波」について「もはやショーだ」と評し、ステージでのパフォーマンスの可能性を模索。バルト三国で盛んな、ウィスク(シラカバなどの植物の束)を使って体をマッサージするサービス「ウィスキング」にも注目し、資格制度の創設を目指す。
 サウナ以外の活動も幅広い。人気カプセルトイ「コップのフチ子」の企画、デザインを担当したほか、水草をメインに水槽内に生態系をつくる「水草水槽」への造詣も深く、コンテストで世界四位に入ったほど。
 大阪出身で元来、お笑い好き。京都精華大在学中にデビューし、創作の傍ら役者をしたり、テレビ番組「笑っていいとも!」の構成作家を務めたり。天久聖一さんとの共著『バカドリル』は、シュールなギャグが一九九〇年代のサブカルチャーに影響を与え、ロングセラーに。母校でデザインを教え、文化庁メディア芸術祭のアドバイザーを務めるなど後進育成にも励む。
 今後は、生活の完全ルーティン化を例に「健康を保ちつつ生産性を上げるための情報を、サウナの楽しさのように愉快に発信していきたい」と、「ととのいの先」を見据えている。 (清水祐樹)

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