<各駅停車>終わりなき旅

2022年5月15日 07時07分
 五月十六日は「旅の日」。俳人の松尾芭蕉が、東北や北陸を巡る旅に出発した日とされる。
 「月日は百代の過客にして、行かふ年も又(また)旅人也」で始まるその紀行文「おくのほそ道」には日光街道草加宿が登場する。三月の啓蟄(けいちつ)の日、北側にある草加松原では松の幹に巻いたこもを外し、冬の間に入り込んだ害虫を駆除した。約一・五キロに及ぶ松並木を守るためだが、近年はこもの中に虫があまり見つからないという。
 松並木の手入れに長年かかわる職人さんの推理は二つ。温暖化で春の訪れが早まり、こもの中の虫が啓蟄の前にはいだした、という説だ。もうひとつは、「全国で最も汚れた川」と呼ばれたこともある綾瀬川の水質改善。下水道の整備や市民のゴミ拾いなどで浄化が進み、川沿いの松を枯らす虫が減ったという見方もできるという。
 生態系の変化は見えにくく、月日をゆるやかに歩む。そんな自然との共生は、終わりなき旅のようだ。世代を超え、息長く守っていきたい。(大沢令)

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