<三宅健とめぐるアート。1>イサム・ノグチの「門」 概念と意思は生き続ける

2022年5月15日 07時28分
 タレントの三宅健(42)と本紙がタッグを組んで新たな連載を始めます。現代アート鑑賞が趣味の三宅が、魅力的なアートの世界を紹介する、題して「三宅健とめぐるアート。」。読者と一緒に作品をめぐりたいという三宅の思いをタイトルに込めました。初回は、世界的な彫刻家のイサム・ノグチの「門」。皇居のそば、東京国立近代美術館にある巨大アートで、同美術館の成相(なりあい)肇主任研究員に解説していただきました。原則、毎月第3日曜に掲載します。紙面と電子版では、作品とともに三宅健の写真も掲載しています。
 三宅 今回とりあげるイサム・ノグチの「門」はどういった作品ですか。
 成相 1969年に東京国立近代美術館が今の場所(北の丸公園)に新築された際に、ノグチがこの建物に合わせて作りました。
 三宅 高さ10メートルの巨大な彫刻はすごい迫力があって。シンプルな形と、朱色と黒のコントラストがかっこいいですよね。
 成相 この作品はまさに「色」がポイントで、面白いことに作品の色を変えていいことになっているんです。ほかにも青と青、黄色と黒の計3パターンが、ノグチ自身の指示によって決められている。10年以上この(朱と黒の)状態なんですが、近々塗り替える予定になっています。
 三宅 では、今のパターンはもうすぐ見られなくなるということですか。
 成相 そうです。三つを順繰りに塗っていくので、次は青と青になる予定です。朱と黒で見られるのは当分先になります。
 三宅 作られた時は何色だったんですか。
 成相 良い質問です。実は一瞬だけ非公式の色があって、朱と朱にしたそうなんですよ。おそらく鳥居のイメージじゃないかと思うんですが、それをノグチが見て気に入らなかった。それで朱と黒に変えました。だから朱と朱はもう存在しないプランなんです。
 三宅 では一番下に、朱と朱が塗られているんですね。
 成相 色の選定で面白いのは、ノグチが東京を見ながら、東京の風景の中にある色を採用しているんです。例えば、青は何の色だと思いますか。
 三宅 東京にある色ですよね。海ですか。
 成相 もっと人工的なものです。
 三宅 ビルのガラス。
 成相 ごみ収集車の色だそうです。黄色と黒は交通標識の飛び出し注意や踏切などの色です。
 三宅 面白いですね。ノグチというと、小さい時から東京・赤坂にある草月会館で見ていた作品が印象深いです。一般的には、「あかり」シリーズや家具のイメージを持つ人が多いと思うんですが、こんな大きなスカルプチャーを東京で気軽に見られるということを知らない人も多いですよね。
 成相 まさに、東京でこれだけのサイズのノグチは珍しいですね。
 三宅 僕は作品を見てすごくテンションが上がりました。作品が塗り替えられていくことで、イサム・ノグチの概念と意思が今も生き続けている気がします。作家はもう亡くなってしまっていても、そこが継承されていくこともアートとして興味深いなと思います。
 成相 おっしゃる通りです。 (構成=ライター・苔縄由紀子)
 *次回は6月19日掲載予定です。

◆イサム・ノグチ(1904〜88年)詩人で英文学者の日本人の父と作家で教師のアメリカ人の母との間に生まれ、世界的に活躍した彫刻家。

◆イサム・ノグチ「門」 1969年に東京国立近代美術館の敷地内に設置された鉄製の彫刻。

◆KEN’s MEMO

 彫刻はいろんな角度から見ているとどんどん表情が変わってきます。遠目だとただの支柱に見えるのに、近くに来るともっと複雑で面白い形になっていて感動しました。
 ノグチが「東京の中にある色」、しかも自然のものではない色を選んで、そこにどういうメッセージが込められているんだろうと考えたりすると、とても面白い。「門」というタイトルも、東京に入ってくる「入り口」という意味なのかなと思いました。
<みやけ・けん> 1979年生まれ、神奈川県出身。95年、V6としてCDデビュー。現在は舞台、テレビ、ラジオなどで幅広く活躍中。三宅は「子どもの頃からアートがそばにあった」といい、今も美術館やギャラリーを訪れ、アートに触れる時間を大切にしている。特に「今」を生きるアーティストの作品をチェックしているという。
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 三宅がパーソナリティーを務めるbayfm「三宅健のラヂオ」(土曜午後10時30分)に、本連載との共同企画コーナーを特設。取材の裏話は21日の放送でお楽しみください。

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