異文化知り 相手尊重を 英語表現に見るジェンダー平等 NHK語学講座元講師・杉田敏さんに聞く

2022年5月16日 07時40分
 英語でのコミュニケーションには、ジェンダー問題や性の多様性への理解が不可欠−。NHKの英語講座で長く講師を務めた杉田敏(さとし)さん(78)=写真=は、講座や著書で選択的夫婦別姓や性的マイノリティーなどの話題を頻繁に取り上げている。「異文化を理解し、相手を尊重する対応を」と話す杉田さんに、英語表現や米国社会から見るジェンダー平等について聞いた。 (石原真樹)
 杉田さんは昨年春に終了したNHKラジオ「実践ビジネス英語」の講師を通算三十二年半担当。現在は、雑誌の内容をアプリなどを使って聴くNHK出版の語学講座「杉田敏の現代ビジネス英語」の講師を務める。
 二〇二一年春号のテキストで取り上げたのは、選択的夫婦別姓の話題。ニューヨークのグローバル企業に配属されて日の浅い日本人男性を主人公に繰り広げられた会話はこうだ。
 結婚後に姓を変えなかった米国人女性は「姓はその人のアイデンティティー」ときっぱり。米国では夫婦それぞれの姓を組み合わせて新たな姓を作れることに触れながら、日本は夫婦同姓を法律婚の条件とする「世界で唯一の国ではないにしても、数少ない国の一つ」などと話が展開する。
 女性解放を訴え、一九七〇年代にウーマンリブ運動が巻き起こった米国では「ジェンダー差別や性の多様性を巡る知識は一般的な素養」と杉田さん。米紙の報道などを日々チェックしながら講座の内容を考えると、自然にこうしたテーマを扱うことになるという。「日本は世界の潮流から遅れていると認識することが第一歩」と指摘。「理解していないと相手を傷つけたり訴えられたりしかねず、ビジネスでトラブルになる可能性がある」と訴える。
 米国務省は四月から、男性と女性に限られていたパスポートの性別欄に、性自認が男女どちらでもない「X」の選択肢を設けた。そんな社会の動きは英文法にも変化をもたらしている。
 話し手と聞き手以外を示す三人称の単数代名詞は通常、He(ヒー)(彼)/She(シー)(彼女)/It(イット)(それ)で、複数形はいずれもThey(ゼイ)(彼ら)だ。ところが近年、性自認がいずれの性でもなく、HeともSheとも呼ばれたくない人に、Theyが単数形として使われるようになってきた。
 スーパーの店員が胸に付ける名札などに、自分を呼ぶ際は「『They』を使ってください」という趣旨の表記をする動きも=イラスト。男女を区別しない代名詞には他にも、どう発音するかは定まっていないもののZe、Xe、Hirなどがある。
 ニューヨーク州では一五年から、相手が望まない代名詞を故意に繰り返し使って、それが差別と認められると罰金が科せられるという。翻って日本はどうか。昨年九月、トランスジェンダー女性が、うつ病を発生したのは、上司に何度も「くん」付けで呼ばれるなどしたことが原因として、労災を申請したケースが報じられた。
 杉田さんは、効果的な異文化コミュニケーションには「言語や背景にある社会の動きなど相手の文化を知ること、そして自分がどう見るかではなく、相手がどう見られたいかを尊重することが大切」と話す。その上で、言語や国が異なる人だけでなく、家族や親しい友人など身近な人であっても「自分以外は異文化」と強調。「世の中はどんどん変化しており、高い意識を持ち続けることが必要」と呼びかける。

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