市民は不満、経済は悪化、WHOも疑問視…それでも「ゼロコロナ」に固執する中国・習近平政権

2022年5月17日 06時00分

北京市内で新型コロナウイルスの検査を受けるために並ぶ人たち=AP

 厳しい行動制限で新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込んできた中国の「ゼロコロナ」政策に対し、国内外で方針転換を求める声が強まっている。だが、中国共産党の習近平しゅうきんぺい総書記(国家主席)は主要人事が決まる今秋の党大会を控え、政策転換を図るにはリスクも大きい。中国製ワクチンの有効性の低さや医療体制の脆弱ぜいじゃくさもあり、習政権は正念場を迎えている。(北京・白山泉、坪井千隼)

◆防護服の警官、扉を蹴破り陽性者に迫る

 「外へ出ろ!」
 3月下旬から都市封鎖(ロックダウン)が続く中国最大の経済都市・上海。白い防護服姿の警官がマンション一室の扉を蹴破り、室内にいた陽性者に迫った。「隔離を執行する。協力しないと公共安全に危害を加えているとみなす」
 中国のSNS(交流サイト)には連日、陽性者や濃厚接触者を隔離施設に連行しようとする当局者の映像が投稿され、次々と削除されている。
 上海では5月に入って1日当たりの新規感染者は減少傾向にあり、一部では行動制限の緩和を実施。しかし、習氏が五日、党の会議で「(ゼロコロナの)堅持こそが勝利」と強調すると、地元当局は再び外出制限に乗り出した。マンション一棟から1人でも感染者が出ると、全住民が隔離されるケースもある。

◆今のやり方はあまりにも理不尽

 長引く封鎖で市民の不満は極限に達している。
 上海の華東政法大の童之偉とうしい教授が8日、「行動制限は違法であり、直ちにやめるべきだ。ウイルスの毒性は弱い」とSNSに書き込むと、当局からすぐ削除された。上海在住の経済アナリストは「市民の多くは、声に出さなくとも今のやり方はあまりに理不尽だと考えている」と話す。
 上海市の宗明そうめい副市長は16日、6月1日から中・下旬にかけ「企業活動や市民生活を正常化させる」との目標を示したが、2500万人近い市民の大半は半信半疑だ。
 厳しい制限は上海以外でも行われ、経済への影響も深刻さを増す。北京では4月下旬から感染が広がり、市中心部は生活必需品を除く大半の商店が閉店、企業も在宅勤務を強いられた。国家統計局によると、4月の小売売上高は前年同月比11.1%減となり3月よりも減少幅が拡大した。

◆続投かかる党大会控え、失敗認められず…

 中国の1日当たりの感染者は数1000人と、欧米などと比べて低い水準だ。
 欧米各国では行動緩和やマスク着用の撤廃が進んでいる。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は10日の記者会見で「ゼロコロナが持続可能だとは思えない」と中国政府に方針転換を迫った。
 一方、中国外務省の趙立堅ちょうりつけん副報道局長は11日の会見でテドロス氏の発言に「無責任」と反発。「中国はコロナ対策で世界で最も成功した国の一つ」とし、SNS上ではテドロス氏の発言内容は削除された。
 習氏の3期目続投がかかる党大会を控え、習氏がコロナ対策の失敗を認めることはできない。ゼロコロナを放棄すると、大勢の犠牲者が出るとの指摘もある。
 上海の感染症専門家らの研究チームは10日、中国製ワクチンの有効性の低さや農村部の医療体制の不備を理由に、爆発的な感染拡大で「(中国国内で)150万人以上が死亡する恐れがある」との試算を国際医学誌に公表した。

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