原発避難4訴訟が結審 最高裁、夏前にも統一判断へ 避難者「痛み、放置せず判断を」

2022年5月16日 20時35分

最高裁判所

 東京電力福島第一原発事故で福島県から愛媛県に避難した住民らが国と東電に損害賠償を求めた集団訴訟の上告審弁論が16日、最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)で開かれ、原告側と国側が意見を述べて結審した。最高裁に係属中の同種訴訟4件の審理がこれで終結し、夏前にも統一判断を示すとみられる。
 弁論で原告側は、防潮堤の設置は長い年月と数百億円の費用がかかる一方、建屋の水密化工事は1億円未満で1年以内に完了すると指摘。「防潮堤の設置と建屋の水密化を講じていれば、津波の影響は相当程度軽減され、事故は起きなかった」と主張した。
 一方、国側は「想定とは違う津波で、仮に防潮堤を設置しても防ぐことは不可能だったし、原子炉施設の水密化で対処する手法は当時確立していなかった」と反論した。
 愛媛訴訟は、福島県から愛媛県に避難した10世帯25人が2015年までに提訴。19年に松山地裁、21年に高松高裁がいずれも国と東電の責任を認めた。東電に対して賠償金約4600万円の支払いを命じた高松高裁判決は、今年3月に確定している。

◆「原発事故を起こした社会の誤りを正さないと」

 意見陳述で福島県南相馬市から愛媛県に避難した原告の渡部寛志さん(43)は、「人の痛みを放置させない判断を」と声を振り絞り、国の責任を認める判断を求めた。
 「普通に高校に行って、普通に大学にいけたんじゃないか」(22歳男子大学生)「両親は離婚せず、お父さんと遊びに行ったり、反抗したりできたんだろうな」(高校2年の女子生徒)―。渡部さんは、他の原告たちの「もしも原発事故がなかったら」の声を紹介。「あの暮らしを返せとどんなに望んでも取り返せない」と声を震わせて被害を訴えながら、「国の責任を認めた判決を得て、原発事故を起こした社会の誤りを正さないといけない」と強調した。
 弁論後の記者会見で、原発被害者訴訟原告団全国連絡会は、判決で国の責任が認められた場合に政府や与党に求める「救済に関する共同要求」を報道陣に公開した。要求は賠償額の見直しや汚染水の海洋放出の撤回など9項目。馬奈木まなぎ 厳太郎いずたろう弁護士は「例え勝訴してもそれで終わりではない。救済策が実現されるよう、判決後すぐに行動していく」と語った。(小沢慧一)

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