新型コロナ「時短命令は違法」 わずか4日の効力を疑問視 東京地裁、都知事に過失なし

2022年5月17日 06時00分
 新型コロナウイルス特別措置法に基づく東京都の営業時間の短縮命令で営業損害を受けたとして、飲食チェーン「グローバルダイニング」(東京)が東京都に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は16日、「命令が特に必要だったとは認められず、違法」と判断した。一方、命令を出した都知事に過失はなかったとし、原告の請求を棄却した。

判決後、記者会見するグローバルダイニングの長谷川耕造社長㊧ら=16日、東京・霞が関で

◆「個別事情が必要」都側の合理的な説明なく

 コロナ禍での営業の制限を巡る司法判断は初めて。原告側は判決を不服として即日控訴した。
 全国初となった時短命令は2回目の緊急事態宣言期間中だった昨年3月、時短の要請に応じなかった同社の26店を含む32店に出された。
 判決で松田典浩裁判長は、特措法が定める命令の発出には「不利益処分はやむを得ないと言える程度の個別の事情が必要」と指摘。同社の店舗でクラスター(感染者集団)が発生するリスクが高かったとは認められず、命令の公平性について都の合理的な説明はないとした。
 ただし、都の審議会が命令の必要性を認めていたことなどから、都知事に過失はなく、国家賠償法上の賠償責任は負わないと結論づけた。特措法や命令が営業の自由や表現の自由を侵害するとの主張については、違憲ではないとした。
 同社は、命令は「狙い撃ち」で営業の自由を侵害するなどとして、104円の賠償を都に求めていた。都側は、同社は上場企業で社会的影響力が大きく、時短に従わないことは「他の営業継続を誘発して感染リスクを増大させる」などと命令は適法だと訴えていた。

「コロナ特措法訴訟」の判決結果について話す原告の長谷川耕造グローバルダイニング社長(左から2人目)ら=16日、東京・霞が関で

◆記者解説 行政に求められる慎重さ

 新型コロナ特措法に基づく飲食店への時短命令を違法と判断した東京地裁判決は、過料という行政処分を伴う命令の発出について、行政に慎重で公平な運用を求めた形だ。
 特措法は、国民の自由や権利の制限は必要最小限であることを求め、要請に応じない場合の最終手段である命令は「特に必要がある」との厳しい要件を設けている。判決はこの点で、不利益を伴うこともやむを得ないといえる個別事情が必要だと説いた。
 2回目の緊急事態宣言下、都の調査では計2000店以上が時短要請に従っていなかったが、命令は32店に出され、うち26店が原告のグローバルダイニングだった。
 都側は、同社が上場企業で時短要請に応じない考えをホームページなどで「強く発信」している点などを正当性の根拠に挙げたが、判決は、店の感染対策などを個別に調査せず、ただ営業を継続しただけでは命令の要件を満たさないと指摘。同社の発信についても「触発されて実際に夜間営業を継続した飲食店の存在は認められない」と断じた。
 今回の命令が緊急事態宣言解除のわずか4日前だった点でも、判決は命令による感染抑止効果を疑問視した。「見せしめ」のような公権力の行使は許されない。コロナ禍でも、国民の権利制限には抑制的な対応が求められることを判決は明示した。(小嶋麻友美)

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