国文化財「憩いの場」が危機 築90年 屋根劣化で雨漏り、壁変色… 三島の佐野美術館・隆泉苑 大改修へネットで資金募る

2022年5月17日 07時54分

佐野美術館の庭園にある隆泉苑=いずれも三島市で

 刀剣の展示や庭園が人気の佐野美術館(三島市)で、国登録有形文化財の日本家屋「隆泉苑(りゅうせんえん)」が危機に陥っている。築約九十年を迎え、屋根の劣化による雨漏りで壁が変色。初の大規模改修を決めたが予算が足りず、インターネットで資金を募るクラウドファンディング(CF)に活路を見いだした。十日から始めたCFは三期に分け、計五千九百万円を目標に協力を呼びかけている。(渡辺陽太郎)
 隆泉苑は美術館の創立者で、化学工業の発展に尽くした三島市出身の佐野隆一(一八八九〜一九七七年)が両親のために建設。伊豆半島や京都府などの吟味された木材を使い、書院造りや数寄屋造りなど一流職人の技術が詰め込まれた。
 佐野の死後、遺族から美術館に寄贈され、九七年に登録有形文化財となった。現在は結婚式や茶会などで利用され、刀剣展示会の際は実際に触れてもらう体験会の会場にもなっている。散策する人が多く、市民の憩いの場である庭園の象徴としても親しまれている。
 しかし、時の流れには勝てず、雨漏りが深刻化し、いつしか邸内の壁や柱に黒い染みが目立つように。過去数回、土壁の塗り替えなど小規模改修をしてきた。美術館の加藤良晴常務理事は「根本的な改修が必要だが、数千万円の費用の捻出は展示会や庭園の維持管理への影響が大きい」とCF実施の理由を語る。
 大規模改修は工期を三つに分け、屋根瓦や雨漏り防止素材の交換、各部屋の下地の補修などを行う。CFも三期に分けて実施する。一期目は千八百万円を目標に六月末まで実施。二期目は二千四百五十万円、三期目は千六百五十万円を目標に行う。返礼品は一万〜百万円の寄付額に応じ、瓦への名入れや隆泉苑の貸し切り券などを用意している。期間内に目標に達しない場合、全額返金される。
 近年はアニメをきっかけにした刀剣ブームなどで美術館は注目を集めている。加藤理事は「追い風は感じる。三島の宝を残すために力を貸してほしい」と呼び掛ける。寄付はCFサイト「レディーフォー」で募っており、「佐野美術館 レディーフォー」で検索。十六日午後四時半時点で、約九百五十万円が集まっている。

雨漏りで黒い染みができた隆泉苑の天井


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