暑くなる前の熱中症対策「暑熱順化」とは? 東京は5月中旬から「前線」

2022年5月18日 06時00分
 毎年夏になると多くの人が熱中症で搬送され、時には死につながることもある。熱中症対策としては、事前に体を暑さに慣らす「暑熱順化しょねつじゅんか」が重要といわれている。1人でも多くの命を救おうと、日本気象協会は今年から「暑熱順化前線」の公表を始めた。暑い夏はまだ先かもしれないけれど、今のうちから熱中症にかかりにくい体づくりをしましょうー。耳慣れない「前線」には、そんな願いが込められている。(デジタル編集部・瀧田健司)

2022年の「暑熱順化前線」(日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクト提供)

◆東京は5月中旬から

 冬から春ごろにかけた時季は、暑さに慣れていないため体内の汗の量や血流が比較的少なく、体から熱が逃げにくいために熱中症にかかりやすくなる。
 さらにコロナ禍では、マスク着用でのどの渇きを感じにくく、水分補給のタイミングを逃す可能性があるほか、外出が減ることで体が気温の変化に慣れないままになる懸念もあるという。
 「暑熱順化」とは、運動などによりこうした体の状態を改善し、暑さに慣らすことを意味する。実際に体が暑さに慣れるには、数日〜2週間ほどかかる。
 日本気象協会は今年から、「桜前線」や「紅葉前線」と同じような「暑熱順化前線」の公表を始めた。過去の気象や熱中症のデータを基に、それぞれの地域でいつごろから「暑熱順化」の取り組みを始めればいいのかを示した。1回目の公表では、東京は5月中旬となっている。

◆夏でないのに真夏日が4日

「今年は梅雨明けが早め。暑くなる前に対策が必要」と話す気象予報士の久保智子さん

 なぜ5月から「順化」する必要があるのか。気象庁のデータによると、5月の東京都心で25度以上の「夏日」の日数は、1950年代の10年間は計65日だったのに対し、2010年代は計150日に増加。20年と21年の2年間でも計31日あった。19年の5月下旬には30度以上の「真夏日」も4日あり、梅雨前に気温が高くなる日が増えている。
 同協会の気象予報士久保智子さんは「5月は朝晩の気温差があり、体温調節がうまくいかない。今年の6月や7月は平年より気温が高くなることが予想され、急に蒸し暑くなる前に対策が必要」と警鐘を鳴らす。

◆今のうちから汗をかく

 「暑熱順化」のためには何をすればいいのか。同協会によると、一番大切なのは「日常生活で適度な汗をかく」こと。具体的には、ウォーキングやジョギング、ストレッチであれば週5回、サイクリングならば週3回など。湯船に入る入浴は2日に1回程度が望ましいという。
 協会の曽根美幸さんは「暑熱順化は意識しないと難しい。帰宅時に1駅分歩くなど、生活の中にうまく取り込んでほしい」と呼びかける。

暑熱順化するために目安となる運動など(日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクト提供)

◆梅雨明け、お盆明けも要注意

 ただ、せっかく5月から汗をかいて「順化」に努めても、残念ながら梅雨の間に気温が下がると、また体は元に戻ってしまう。このため協会は、7月ごろの梅雨明けを見越して2回目の「前線」公表を予定。気温や体の変化に合わせて適宜発表を続けていく方針だ。久保さんは「今年は梅雨明けが早め。6月の終わりにも始めた方がいい」と話す。

◆5月から増える熱中症

 急に気温が上がると、5月でも熱中症の搬送者が目立ち始める。19年5月下旬に東京で4日連続の真夏日が観測されると、それまで連日ほぼ一桁だった都内の搬送者は、4日間で計236人にまで急増した。
 消防庁の統計によると、5月の熱中症搬送者は統計を取り始めた15年以降では19年が最多。同年は全国で4448人が搬送され、死者も8人いた。
 少し先になるが、梅雨明けの時期にも注意が必要。消防庁の統計によると、21年は本州で梅雨明けした7月中旬の週には、全国で熱中症の搬送者が前週の約1.8倍に増加。翌週にはさらに約1.8倍増え、同年で最多を記録した。

おすすめ情報

気候変動/1.5度の約束の新着

記事一覧