<社説>コロナ対中提言 なぜ聞く耳持たぬのか

2022年5月18日 07時00分
 「ゼロコロナ政策」の転換を求めた世界保健機関(WHO)の提言を一蹴して中国はどうするのか。上海市のロックダウン(都市封鎖)は一カ月半を超えて住民は疲弊し、中国経済は急減速している。「ゼロコロナ」堅持の政治的メンツにこだわるべきではない。
 WHOのテドロス事務局長は十日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に抑え込む中国の「ゼロコロナ政策」について「持続可能とは思えない」と批判し、「別の戦略への移行は非常に重要だ」と提言した。
 感染力の強い変異株が出現する中で、完全な封じ込めは難しくなっているとのWHO側の指摘は当を得たものであり、多くの国はそうした認識で新型ウイルスと共存を目指す「ウィズコロナ政策」への転換を図っている。
 だが、中国外務省の趙立堅副報道局長はこの提言を「無責任な発言」と批判した。
 中国共産党が五月初旬に開いた重要会議では「ゼロコロナ政策」の徹底が再確認されたという。
 かつて中国寄りと批判されたWHOの提言にすら耳を貸さないのは、習近平国家主席が主導した政策に、国内では誰も異を唱えられないからであろう。
 趙氏は「中国はコロナの抑制に最も成功した国の一つだ」と自画自賛した。これまでの「ゼロコロナ」が功を奏し、中国の感染者数が他国より圧倒的に少ないことは国際社会も認めている。
 だが、中国に必要なのは、変異株が感染急増を招く一方、国外では変異株に有効なワクチンの普及などで重症者が減少している現状を冷静に観察し、臨機応変に対処することである。
 もし、十四億人の人口を抱える国で感染が爆発的に広がることにでもなれば、変異株発生の巨大な温床になりかねない。有効性が低いとされる中国製に代わるワクチンの受け入れなど柔軟な対策が急務であろう。
 中国国家統計局の十六日の発表では、四月の小売売上高は前年同月比11・1%減少した。社会や経済とのバランスを重視した政策への転換を図るべきである。

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