母国の「家」思い、反戦へ団結 東京外大で美術展 4カ国の芸術家出展

2022年5月18日 07時01分

府中市の東京外大で開催される美術展。ウクライナ、ロシア、ベラルーシ、日本の芸術家7人の作品が並ぶ

 ロシア軍のウクライナ侵攻が続く中、反戦を訴える国内外の芸術家七人の美術展が十七日、府中市内の東京外国語大の図書館で始まった。日本在住のウクライナ人が企画し、ロシアやベラルーシの画家らも出展した。悲しみ、怒り、自責の念…。それぞれ母国の現状にやり切れない思いを抱えながら参加している。

ウクライナ出身の写真家レーナ・アフラーモワさんの作品「母屋。形のないわが家。」。日本家屋を撮影し、概念としての家を表現した

 「戦争のニュースが入るたびに家々が破壊され、そこから出る煙を見た。私の思い出も煙に変わってしまった。爆撃を避けるため、家で子どもと廊下で寝ている人の話も聞いた」
 横浜市在住のウクライナ人写真家、レーナ・アフラーモワさん(46)は「家は戦争の中心にある。私にとって家とは、思い出や夢、においなどが混ざった自分の内面のものでもある」と考えている。
 「現状を受け止めるのはつらく、アートは戦争を止められるわけではない。それでも関心を呼び、考えてもらうことはできる」と美術展を思い立った。侵攻で大きな影響を受けている「家」をテーマに決めた。
 知人が通う東京外大は、侵攻への抗議声明を出していたため、会場の提供などを依頼。ウクライナや日本に住む知り合いのほか、侵攻を作品にしている画家などに出展を呼びかけた。
 出展者の出身国はウクライナ三人、ロシア二人、ベラルーシと日本が各一人。このうちモスクワ在住のロシア人画家は、政府批判による身の危険を覚悟しながら参加してくれた。

ロシア出身の華道家イリヤ・バイビコーフさんの生け花作品。破壊された家に残されたおもちゃと再生を表現した

 ロシア出身で神戸市在住の華道家、イリヤ・バイビコーフさん(50)も呼びかけに応じた一人。「ロシア軍がウクライナでしていることを見ると、憎しみを感じる。現在の世界では許されない」と怒りをあらわにする。
 「私にとって今回の美術展への参加はとても重要。独立と生き残りのため戦うウクライナ民族への団結を表すことだから」
 旧ソビエト連邦の崩壊時に国を離れたため、出展による身の危険などは感じていない。ただ、当時の経験から「国から避難し、新しい家を手に入れる大変さは知っている」と避難民を気遣う。
 出展した生け花の作品には、焦げた竹や、ウクライナ国旗と同色の青と黄色の花をあしらった。戦禍の悲しみと、その後の希望をそれぞれ表現した。

ベラルーシ出身の画家イリヤ・イェラシェビッチさんの作品「宴の記憶」。家族と囲んだ食卓の思い出を描いた

 ベラルーシ人で東京芸術大の大学院に在籍する画家、イリヤ・イェラシェビッチさん(29)は出展作で、並んだ食器を描いた。「においと味は、家族との食事や家の記憶を思い起こす」と気付いたためという。
 「今回の侵攻は私にとっても悲劇」と嘆く。ウクライナは両親と夏休みを過ごし、思い出が多い場所だった。ベラルーシからウクライナに移り住んだ友人は、侵攻で再び他国に移る羽目になった。
 侵攻ルートをロシア軍に提供する母国の政権を「(関与しない)オブザーバーと言っているが、責任はある」と批判する。
 侵攻後、「罪は決定を下した人にあるが、責任は全員にある」とよく言われるという。「自分に責任がないとは絶対に言えない。だから、いろいろな場所に参加し、できる限り自分の声を上げる」と思っている。
 ◇ 
 美術展「ドム・ディム・ドム」は六月十六日まで。日曜、六月二日は休み。ロシア語で「ドム」は「家」、「ディム」は煙を意味する。見学無料。
 文・宮本隆康/写真・隈崎稔樹
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