「理想的住まいを満喫」 「農地付き空き家」全7物件完売へ 移住促進×農業担い手 栃木市、物件確保に奮闘

2022年5月18日 07時20分

移住した藤田さん夫妻。母屋前の畑に収穫目前のジャガイモの葉が広がる=栃木市で

 本格家庭菜園が楽しめる空き家はいかが? 栃木市が昨年度から始めた「農地付き空き家」の販売が絶好調だ。移住促進と農業の担い手不足抑止の二兎(と)を追う。導入自治体としては後発ながら地方移住ブームにも乗って、販売した七物件はすべて売買成立か成立見込みという。(梅村武史)
 「理想的な住まいを満喫しています。後悔は全くない」と笑顔で語るのは藤田雄大(ゆうだい)さん(35)、華菜子さん(32)夫妻。同市藤岡町赤麻にある約五百十九平方メートルの農地付きの空き家を七百五十万円で購入した第一号契約者だ。7LDK母屋の水回りや床の一部などを三百万円かけてリフォームし、昨年九月に移住した。
 雄大さんは競技熱気球の「やずやバルーンチーム」に所属する世界的パイロット。生活拠点を定めず国内外を転戦する生活だったが、平野が広がり、渡良瀬遊水地まで徒歩五分という熱気球活動に最適な環境にひかれた。佐賀県出身の華菜子さんが家庭菜園を夢見ていたことも移住の決め手になった。
 家屋前の畑には栽培中の野菜が広がる。「インターネットで野菜づくりを学び、今ではトマト、ピーマン、ジャガイモなど十七種類を育てています」と華菜子さん。「いつか商品として成り立つ野菜を育てたい」と意気込む。
 農地法は、非農家が農地を購入する際、面積五十アール(五千平方メートル)以上が必要と定めており、一般の人にとってハードルが高かった。二〇〇九年に同法改正があり、自治体の農業委員会の判断で面積引き下げが可能になった。
 鹿沼市、佐野市などの先行事例に遅れて栃木市は昨年四月から実施。「空き家バンク」を通じて農地付きの空き家を買う場合に限り、一平方メートル以上に条件を緩和し、農地面積八十五〜千三十七平方メートルの七物件を売り出したところ、予想以上の注目度だった。市農業委員会事務局では「地方移住ブームと田舎暮らしへのあこがれが結び付いたのでは」と分析する。
 課題は市の空き家バンク登録が進まず、需要に供給が追いつかないこと。休耕地と空き家の組み合わせは市内に多数あり、担当者は「農家の方々に制度の周知を進めて供給物件を増やしていきたい」と話した。

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