CO2出ない「グリーン水素」でオマーンに熱視線 世界最大級の製造拠点を整備中

2022年5月18日 12時00分
 アラビア半島南東端のオマーンが、二酸化炭素(CO2)を排出しない「究極のクリーンエネルギー」とも呼ばれる「グリーン水素」事業の舞台として、注目を集めている。政府は中部ドゥクムの経済特区に、世界最大級のグリーン水素製造拠点を整備中。2月には経済特区内の港も開港し、2026年までに欧州やアジアへの輸出を目指している。(オマーンの首都マスカットで、蜘手美鶴)

 グリーン水素 太陽光や風力など二酸化炭素(CO2)を排出しない再生可能エネルギーで水を分解して製造する水素。酸素と反応させて発電したり、燃焼させて熱エネルギーとして利用できたりし、化石燃料の代替として期待される。環境対策に力を入れる欧州などで特に注目されている。

2月、オマーン中部ドゥクムで、開港式に出席するベルギーのフィリップ国王(左から2人目)とオマーン政府関係者ら=ドゥクム港ホームページから

 「ドゥクムは今後数年で、世界のグリーン水素市場で重要な役割を果たすようになる」。2月初旬の港の開港式で、港管理組合幹部の男性がメディアの取材に興奮気味に話した。港はベルギーのアントワープ港と提携し、グリーン水素の欧州輸出の拠点となる。式典にはベルギーのフィリップ国王も出席し、両国の期待の高さがうかがわれた。
 経済特区はシンガポールの約2・8倍の約2000平方キロメートルを誇り、港と結ばれた産業地区では、国営石油会社OQとベルギー企業などが、250〜500メガワット規模の太陽光・風力発電所を整備予定。その電力を使って26年までにグリーン水素の供給を開始し、ドゥクムを一大製造拠点にする狙いだ。

2月下旬、マスカットで、「オマーンはグリーン水素製造に適している」と話すオマーン経済特区公社のアルディーブ副委員長=蜘手美鶴撮影

◆太陽、風、港…3つの「恵み」

 オマーンがグリーン水素事業に力を入れる背景には、その恵まれた自然環境と立地がある。中東特有の強烈な日差しは太陽光発電に適し、アラビア海から吹く風は風力発電に活用できる。海に面した立地は船での輸出を容易にし、グリーン水素事業に欠かせない条件がそろっている。
 ドゥクム以外でも大規模なグリーン水素事業の計画は進み、香港拠点の企業などと共同で、38年までに国内に2万5000メガワットの太陽光・風力発電所を完成させる予定だ。年間180万トンの供給を目指すという。
 オマーン経済特区公社のアフマド・アルディーブ副委員長(57)=写真、蜘手美鶴撮影=は「太陽、風、港に恵まれたオマーンだから可能で、どの国でもできるわけではない。グリーン水素は大きな可能性がある分野だ」と話す。

2月下旬、マスカットで、「条件のいい国で仕事をするのが一番いい」と話すモハメドさん=蜘手美鶴撮影

 グリーン水素事業以外の再生可能エネルギー分野でも、オマーンは外国人起業家を引きつける。エジプト出身のモハメドさん(38)は3年前から農家向けに太陽光パネルの販売を始めたといい、「需要の高まりと事業経費の安さが魅力」と理由を説明する。
 マスカット近郊では夏場の気温は50度を超え、野菜のハウス栽培に冷房は欠かせない。太陽光パネルの設置で電気料金が半分以下に抑えられ、数年前から売れ行きが伸びている。
 また、2年ごとに外国人事業者が支払う登録費も、オマーンは他の湾岸諸国と比べて約3分の1。モハメドさんは「太陽光は世界中どこにでもある。それなら条件のいい国で仕事をするのが一番いい」と話した。

おすすめ情報

気候変動/1.5度の約束の新着

記事一覧