新型肺炎 院内感染か 事例相次ぐ 政府「渡航歴重視」が一因

2020年2月18日 02時00分

死亡女性を担当した看護師の新型コロナウイルス感染が確認された、相模原中央病院の入り口脇に張り出されたお知らせ=17日、相模原市中央区で

 新型コロナウイルスに感染して国内で初めて死亡した神奈川県の八十代女性が入院していた相模原市の相模原中央病院で、看護師が感染していたことが十七日に判明した。和歌山県でも既に病院の医師や患者が感染し、「院内感染」とみられる事例が相次いでいる。院内感染の一因として、厚生労働省が中国湖北省への渡航歴の有無などを重視したため、感染者の発見が遅れ、十分に防護を図れなかったことが挙げられる。 (志村彰太、井上靖史)
 「八十代女性の検査が遅れたから、看護師へ感染が拡大したのではないか」
 神奈川県庁で行われた十七日の記者会見。報道陣の質問に、県保健医療部の前田光哉部長は「八十代女性は中国への渡航歴もないし、渡航者との接触もなかった」と困惑した表情で話した。
 県や相模原市によると、八十代女性は一月下旬から体調不良を訴え、相模原中央病院に二月一日から六日まで入院。別の病院に転院後の十二日、呼吸器症状が悪化し、ウイルス検査を実施。十三日の死亡後に結果が陽性と判明した。感染した看護師は一日だけ女性の検温やトイレの介助に当たり、十四日に発熱で途中退勤した。
 和歌山県の五十代男性外科医は一月三十一日に熱や全身の倦怠(けんたい)感が出て、その後二日間の休みを取ったが、二月三~五日は解熱剤を飲みながら出勤。八日に肺炎が見つかった。
 ウイルス検査はさらに五日後。同僚の外科医や患者二人、妻も陽性となっている。
 二つの事案は当初、新型肺炎と疑われていなかった。中国湖北省への渡航歴がなく、滞在歴がある人との明らかな接触歴もなかった。政府は従来、感染を疑う主な対象として渡航歴などを掲げてきたが、要件に当てはまらない疑い例が現場の医師から上がっていた。
 十二日の政府対策会議で安倍晋三首相が、渡航歴などに縛られずに「各自治体の判断で一定の症状がある方に対して、検査が可能」と方針転換を表明。これまでより幅広く検査が行われるようになり、十三日以降、屋形船で感染した東京都の事例などの判明につながった。裏返せば、他にも見過ごされてきた事例はあると予想できる。
 安田二朗・長崎大熱帯医学研究所教授は「検査対象を早く広げていれば患者を早期発見でき、医療従事者も防護態勢を取れた。ただ、当時の状況を考えれば、対象を広げても検査態勢が整っておらず、パンクしていただろう。クルーズ船の対応も含めて政府はもっと早く、検査態勢を充実させておくべきだったのではないか」と話す。

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