福島 処理汚染水海洋放出を了承 漁業関係者、不安と憤り 知事「政府は丁寧な説明を」

2022年5月19日 07時11分

福島第一原発事故後は、県内の漁業にも出荷制限などの影響が出た=ひたちなか市の那珂湊漁港で

 東京電力福島第一原発の汚染水を浄化処理した後の放射性物質トリチウムが残る水の海洋放出に、原子力規制委員会が十八日、実質的にゴーサインを出した。だが、県内の漁業者らからは、国や東電との溝が埋まらないまま手続きが進んでいることに不満の声が上がる (長崎高大)
 「汚染された魚を取ってきて、子どもたちに食べてもらうわけにはいかない」。ひたちなか市の那珂湊漁港でヤリイカなどの底引き網漁を家族で営む根本経子さん(65)は、そう訴えた。漁業協同組合の女性部で市内の学校給食に海産物を提供する取り組みを長年続けており、海洋放出による影響に不安を感じている。
 根本さんは、「トリチウムの放出基準を満たすため、十分に希釈した上で放出する」という東電の説明自体を「信用できない」という。「そもそも放出自体、漁業者の理解を得たうえで実施すると言っていたのに約束を破った」
 同漁港を拠点にヒラメ漁をする男性(74)は、「あれだけの処理水は他にどうしようもない。覚悟はしていた」とあきらめ顔だ。
 とはいえ、風評の再発による魚の取引値の低下には懸念が募る。福島第一事故後に魚価は三分の一程度まで下がったといい、「海洋放出すれば、また半値くらいにはなるんじゃないか。ただでさえ天候が悪くて不漁なのに、受け入れられない」と憤った。
 福島事故は、福島県だけでなく本県の漁業にも大打撃を与えた。現在は全て解除されたが、一時は最大二十八魚種が出荷制限や操業自粛に追い込まれた。
 そうした経緯もあり、県内の十漁協を束ねる茨城沿海地区漁協は一貫して海洋放出反対の姿勢を貫いてきた。あらためて取材を申し込むと、「(国から)正式に説明を受けていないので現時点ではコメントできない」としつつ、「海洋放出反対の方針は変えていない」と答えた。
 大井川和彦知事はこの日、「今なお県内の漁業関係者から厳しい意見が出されている。政府は引き続き丁寧な説明を行うとともに、関係者の意見に対する具体的な対応をお願いしたい」とのコメントを出した。
 県内で最も福島第一に近く、大津漁協と平潟漁協を抱える北茨城市の豊田稔市長は、本紙の取材に「国は適切かつ十分な対応を行うとしているので、その約束を確実に実行してほしい」と話した。

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