<社説>北コロナ急拡大 軍事挑発してる場合か

2022年5月19日 07時41分
 北朝鮮で、新型コロナウイルスの感染が急激に拡大している。発熱患者は百七十万人を超え、死者も増えているという。弾道ミサイル発射など軍事挑発をしている余裕はないはずだ。一刻も早く国際社会の支援を受け入れ、患者の治療に全力を挙げるべきである。
 北朝鮮の報道によれば患者は一日二十万人を超える勢いで発生している。平壌では四月二十五日、大規模な軍事パレードが行われ、参加者はマスクを着けていなかった。これが感染拡大の一因であることは間違いないだろう。
 北朝鮮は、新型コロナ感染が拡大し始めた約二年半前から中国との国境を封鎖してきた。国内で患者は出ておらず防疫体制も万全と主張し、国際機関からのワクチン提供の申し出を拒否してきた。
 このため人口約二千六百万人のほぼ全員がワクチン未接種だ。
 北朝鮮ではもともと基礎的な医薬品が不足している上、栄養状態も悪いなど感染症に脆弱(ぜいじゃく)な人が多い。このままでは感染に歯止めがかからず、社会が混乱し、死者も増える可能性が高い。
 北朝鮮が感染状況を公表したのは異例だ。これ以上事実を隠せないと判断したのだろう。
 北朝鮮当局は、中国のような都市封鎖や緊急用医薬品の放出、中国からの医薬品輸入などで乗り切ろうとするが、不十分だ。
 北朝鮮は今、田植えの時期を迎え、地方に送られた学生や労働者が泊まり込みで農家を支援する。人の動きを完全に止めた場合、コメの生産に支障が起き、食料難を招きかねない。
 すでに大流行が始まっているため、これからワクチン接種を始めても、感染者減少までには時間を要する。当面、解熱剤や検査キット、マスクなどが必要で、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権は人道的立場から支援を表明している。
 ところが金正恩(キムジョンウン)総書記は、感染収束よりも、軍事的挑発を優先し自らの指導力誇示に利用しているように映る。国内での感染確認後、弾道ミサイルの発射に踏み切り、近く七回目の核実験を行うとの観測も出ている。
 北朝鮮は直ちに軍事的挑発をやめ、自国の防疫、医療体制の不備を認めて、韓国や国際機関からの支援受け入れに向けた協議に速やかに応じるべきだ。自国民の命と暮らしをこれ以上、危険にさらしてはならない。

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