<老いるマンション>「終活」への備え直視して 現状と展望、専門家に聞く

2022年5月19日 08時24分
 老朽化が進み、管理の在り方が問われている分譲マンション。さらにその先には、寿命を迎えた建物をどう処分するかといった「終活」の問題も横たわる。マンション終末期の問題について著書などで警鐘を鳴らしている大阪経済法科大教授の米山秀隆さん(58)=写真=に現状と展望を聞いた。 (聞き手・河郷丈史)

◆認定制度に課題

 −四月のマンション管理適正化法の改正で、管理計画認定制度など自治体がマンション管理に関わる仕組みが導入されました。
 適正に管理されていない分譲マンションが少なくないということ。マンションは古くなると、区分所有者も高齢化する「二つの老い」が進む。体力も気力も衰え、お金も出せなくなり、管理組合の機能は自然と低下していく。築四十年ぐらいたつと空室化や賃貸化も進み、管理機能はさらに落ちる。このままだと荒廃したマンションが放置される恐れがあるので、管理を徹底させるため、自治体が積極的に関わっていく仕組みを入れたということだ。
 一方で、国は古くなったマンションの建て替えも促してきた。だが、これまでに建て替えができたのは敷地や容積率に余裕があり、建て替え前より部屋数を増やして、売却益で費用の大半が賄える一部のケース。そうでないマンションは所有者の負担がかなり大きく、建て替え要件の五分の四以上の賛成は困難だ。建て替えが難しい以上、適正に管理して、ちゃんと使い尽くしてもらわないといけない。その前提として今回の認定制度がある。
 −効果は期待できますか。
 これから新築するマンションは、認定制度などを前提に管理される流れになるだろう。既存のマンションにも、管理を見直そうとする動きが出てくるかもしれない。だが、もともと機能していないマンションの管理態勢を立て直すにはかなりのコストや手間がかかるし、認定は義務ではない。認定を受けると税金が減免されるとか、認定の有無によって中古物件としての価値が大きく変わるとか、よほどの金銭的なメリットがなければ動かないだろう。
 どんなマンションも、最後は壊す必要が出てくる。その時、所有者が責任を果たさないとなると、行政が強制的に何らかの措置を取らざるを得ない。一戸建て住宅の空き家と同じ状況にマンションもなっていく。実際、滋賀県野洲市では公費負担でマンションが解体される事態が起きた。

◆区分所有の「壁」

 −解体処分は原則として全所有者の賛成が要りますが、野洲市の物件では連絡がつかない所有者もいて合意形成できず、代執行に至りました。処分の難しさなどを考えると、そもそも区分所有という仕組みに問題があるのでは。
 今にして見れば、問題が多く、決して良い仕組みではなかった。住宅不足を解消しなければならない時代、マンションは手っ取り早い手段で、最後の処分のことは後の問題として先送りされてきたのだと思う。いよいよ、いろいろと考えなければならない時期になってきたということだ。
 −最後の問題に備えるため、どんな対策が考えられますか。
 土地に価値があるなら、更地にして売却すれば解体費用の多くを回収できる。そうではない土地は所有者がほとんどを負担しなければならない。前もって解体費用を準備しておけば、代執行になったとしても税金で負担せずに済む。
 例えば、購入時に解体費用を供託したり、固定資産税で上乗せして徴収したりといったやり方が考えられる。定期借地権付きマンションは、五十年や七十年といった期間が終わった後に更地にして地主に返すのが前提なので、修繕積立金のほかに解体準備金も積み立てている。この仕組みを全てのマンションに適用する方法もあるだろう。
 −マンションをこれから買う人、既に所有している人にアドバイスを。
 買うなら「出口」のある物件。中古として価値を持ち続け、適正な値段ですぐに売れるもの。また、建物としての価値が尽きた後も、土地に需要があって価値が残るもの。そうではない物件を既に所有しているなら、認定制度の活用などで価値を維持するように努め、次の世代に管理を担ってもらう活動を続けていくことが大切だ。
<よねやま・ひでたか> 1963年生まれ、新潟県出身。シンクタンク勤務を経て、2020年9月から大阪経済法科大経済学部教授。専門は住宅・土地政策、日本経済。「限界マンション」「捨てられる土地と家」などの著書がある。
<管理計画認定制度> 分譲マンションの管理状況を自治体がチェックし、認定する仕組み。管理組合の運営や規約、経理、長期修繕計画などに関して、国や自治体が定めた基準をクリアすれば認定を受けられ、住宅ローンやリフォーム融資の金利優遇の対象にもなる。自治体の準備が遅れており、制度創設の4月から認定の受け付けが始まった地域は一部にとどまる。

◆築古物件 今後4倍増

 日本では1950年代から分譲マンションが登場し、高度経済成長期を経て都市部を中心に広まった。当初は庶民の手が届かない高級物件だったが、後に大衆化し、住まいの形態として定着した。
 初の民間分譲マンションは、56年完成の「四谷コーポラス」(東京都新宿区)とされる。62年に区分所有法が制定され、建物の所有関係や管理運営について法的な整備が進んだ。
 国土交通省によると、マンションは増え続け総戸数は2020年末で約675万3000戸。40年末には築40年以上の高経年マンションが現在の4倍の約404万6000戸に達すると予測している。一方、建て替えの事例は準備中も含めて300件程度だ。
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